とみやま

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのとみやまのネタバレレビュー・内容・結末

4.6

このレビューはネタバレを含みます

石油で得たネイティブ・アメリカンの財産を奪うべく起きた虐殺事件をめぐる史実の物語なのだけれど、わかりやすく説教的な物語に陥ることは決してせず、緊迫したドラマで、一定のテンポとリズムで語り続けてくれる。とにかく、すっごい面白い。
深刻な題材の作品は「面白いと言っていいのか」とか言われたりするけれど、作り手が面白いものにしようとして出来上がっているわけなので、仕方がない。それどころか、映画の面白さが先に来て、あとから史実の重さがずしんとやってくる。

デニーロとディカプリオの関係は、逆らえない怖えおじと薄っぺらいバカみたいな感じで、いちいちやり取りが良かった。基本的にディカプリオの行動は「なんか乗れないけど、おじきが言ってるしな…」でしかないのでしょうもなさすぎるし、デニーロはやり口が悪党どころではない。この映画に出てくる白人男性(というか、登場する白人は基本男性)は狡猾なロクでもない人しか出てこないので、スコセッシ映画全開、みたいな感じ。それに、「形式的なものだからさ」で強引に推し進めようとするシーンはめちゃくちゃ良い。特に、「とりあえず署名しよっか。形式的なものだし?一旦署名しようね」とゴリ押す場面は笑った。「大人が形式的と言ってくるものは多分形式的じゃない」ということを教えてくれる映画である。

3時間26分の上映時間とはいえ、体感では2時間無い程度だった気がする。そもそものエピソードが多い(が、省略するわけにはいかない)のだけど、その語り口が手際よくて、一定のテンポとリズムで進むので、徐々に見ている側の気持ちを乗せてくれた気分だった。アーネストとモリーの結婚以降はあっという間。ラストの切れ味もよくて、エンドロールに入るタイミングも、寄席の追い出し太鼓のように見事だった。
とても緊迫感の強い「グッドフェローズ」といった感じ。スコセッシ、もうちょい短くていいから、まだまだ作品撮って欲しい。
とみやま

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