keith中村

キングスマン:ファースト・エージェントのkeith中村のレビュー・感想・評価

5.0
 マシュー・ボーン、どうした?! いい意味で!
 
 予告篇を見る限り、いつものマシュー・ボーン、いつものキングズマンだろうと想像してたんだけど、今回は舵取りというのか、ギアのシフトがかなりシリアスな方向になっていて、そこに意外性があって楽しめました。
(リアル路線ではなく、あくまでシリアス路線でしたね)
 
 本作で凄いと思ったのは、「みんながざっくり知っている歴史上のイベントの見事な普遍化」。
 言い換えると「映像の納得度がとても高い」こと。
 本来、「映像化する」ってのは、複数ある可能性や選択肢のうち、ひとつだけのイメージにフォーカスして提示することなので、「普遍化」じゃなく「具体化」なんですよね。
 つまり、場合によってそれは、「なんか、私の持ってたイメージと違う」ということにもなり得るんだけれど、少なくとも私は、「あ~! 知ってる知ってる! これ、知ってる!」ってなった。
 「少なくとも」って書いたけど、みなさんもそうじゃなかったですか?
 
 たとえばサラエボ事件。これ、予告の段階ですでに、「あ、サラエボ事件だ!」って瞬間に理解できる。
 私はサラエボ事件について、学校で習った以上のことは知らないので、それは教科書に載ってた絵の記憶に過ぎないんだけれど、「これ、見たことある!」ってなったもの。
 で、教科書の記憶が蘇ってくるのね。
 「そうそう。爆弾に失敗して、あとで射殺したんだよね。あ~、こんな感じ」
 ほんとには知らないのに、そう思っちゃう。
 
 ラスプーチンもそう。
 さすがにラスプーチンは興味深いキャラなので、教科書以上の知識はあるし、だから史実との違いも気づくんだけれど、リス・エヴァンスのキャラの立ち方が素晴らしいので、圧倒される。
 「こんな風に踊りながら丁々発止してたかもしらん(Are you a monk or a ballet dancer?)」
 「そうそう。日ごろから毒を喰ってたから耐性できたんだよな」
 「最終的に死んだ川ってもっと遠くじゃないの? でも、なんかこんな感じも似合ってる!」
 そんな風に思っちゃう。
 
 そして、第一次大戦の塹壕戦。
 これはもう、上の例と違って、数限りなく映画で見てきたけどさ。
 「うん、これこれ! いつものあれね!」と納得。
 最初に見たのって、どの映画だろ? タイトル込みで憶えているのは、中学の頃に観た「突撃」だけど、それ以前から知ってたのは間違いない。
 
 私は本作のそういうところに魅了されました。
 「コレジャナイ感」って言葉があるけれど、本作はその正反対の「コレダヨ感」でした。
 
 ストーリーとしてびっくりしたのは、一作目のコリン・ファースとタロン・エガートンの関係性のように描かれてたレイフ・ファイアンズとハリス・ディキンソンだったのに、まさかの展開になるところ。
 ハリス・ディキンソンは、ちょっとジョージ・マッケイに似てるので、「まあ、『第一次大戦顔』だよね。でも、ちょっと華がないかな〜(失礼!)」と思ってたけど、その展開は予想してなかったので相当びっくりしました。
 
 そっから、レイフ・ファイアンズが頑張るんだよね~。
 「M」は現場に行かない人だけど、こっちのオクスフォードさんは現場で頑張る頑張る!
 レイフさん、来年還暦ですよ。俺より6つも上。そりゃ、視覚効果とかスタントダブルは使ってるんだろうけど、俺それでも、やれ言われても絶対無理だもん!
 
 ラストは、コリン・ファースじゃなく、こっちのレイフさんチームでもフランチャイズ化していく匂いが濃厚になってましたね。インディ・ジョーンズと時代が被ってくるけど、本作を観る限り、あっちほど荒唐無稽な無茶ができない舵取りになってるので、大丈夫でしょうか?!
 
 ところで、本作の原題は「The King's Man」でしたね。
 「Suicide Squad」の二作目が「The Suicide Squad」だったし、今度来るバットマンが「The Batman」でしょ? THEをつけてリブート的にするのってもしかして流行ってるの? 日本なら「シン」ですね。
 ただし、本作はさらに言うと「KINGSMAN」じゃなく「KING'S MAN」。
 劇中ではNPOだかNGOみたいに言ってたけど、がっつりジョージ5世が絡んできてたので、King's Manなんでしょうね。
(いっぱいいたから本当は"King's Men"ですね)
 とはいえ、次の大戦の前に亡くなってるんで、続篇作るならどうするの? 次のエドワード8世は別の映画ではコリン・ファースだったよね!
 
 ちなみに、この手のタイトルの古典では、1948年の「オール・ザ・キングスメン」がありました。
 あと、「大統領の陰謀」の原題はそれをもじって、「All the President's Men」。
 これ、全部の原典はマザーグースですよね。
 すべての王の家来をもってしてもハンプティ・ダンプティを元に戻せなかった、ってやつね。
 
 私、アーサー王伝説は名前を知ってる程度で、まったく疎いんだけれど、アーサー、ガラハッド、パーシヴァル、ランスロット、ガウェイン、マーリン(本作は、これだけだったっけ?)の関係性とか、詳しい人は隠されたコンテキスト理解できるんだろうな~。
 レビューをアップしたら、その辺のこと書いてらっしゃる人がいないか、みなさんのレビューを拝読しますね!
 
 最後に全然関係ない話をひとつ。
 私は自分の勤める会社で情報システム系の部署にいるんですが、先月「ノートPCに挿したLANケーブルが抜けなくなった」って社員がいたのさ。無理やり差し込んじゃったらしくって、誰が引っ張っても全然抜けないの。
 で、おれが、「ちょっと貸してみ」って試したら、あっさり抜けたんですわ。
 「えくすかりばぁっ!」って叫んじゃいましたよ。馬鹿かもです。