「ノマドランド」公開が待たれるクロエ・ジャオ監督の前作。
ロマンと危険が隣り合わせの若きカウボーイたちの生き方が静かに描かれる。
主人公に本人を起用した実話だとは知っていたけど、まさか彼の父親や妹、友人たちまでもが本人役だとは。
その結果、フィクションでもドキュメンタリーでもない独特の感触を生み出している。イーストウッド「15時17分、パリ行き」の手法をさらに突き詰めたというか。
広大なアメリカの自然の中を馬に乗って走るシンプルな構図の美しさに見惚れる。ブレイディの夢や、葛藤や、家族への想いが、その雄弁な風景の力を借りて伝わってくる。極限まで演出を削っているのに、アポロとの別れやレインとの会話など、強く印象に残るシーンばかり。すごい映画だ。
