Kogarath

お茶漬の味のKogarathのレビュー・感想・評価

お茶漬の味(1952年製作の映画)
4.2
佐分利信演じる茂吉がとても魅力的。
「戸田家の兄妹」の頃よりぐっと貫禄が出て、演技に渋みが増している。大事な時に旅行で不在の妻に「君らしくていい」と言える懐の深さ。朴訥でありながらパチンコと孤独についての哲学を語る姿からは、心の内にいろいろなものを抱えていることが見て取れる。
対する妻役の木暮実千代も、ブルジョワで性格悪いな~と感じさせつつ、最後の方にはなんか可愛らしいなと思わせるチャーミングさがある。
2人が慣れない台所であれこれ探しながらお茶漬けを作る様子がなんとも微笑ましい。
現実はこんな丸く収まらないとは思うけど、そこは映画の良さってことで。

飛行機や鉄道といった乗り物、パチンコや競輪、ラーメンといった当時のカルチャーが次々と映し出されるのも興味深い。
戦争の爪痕は薄くなり、海外の文化を取り込んで急成長を遂げようとする日本の姿。
タイトルのお茶漬けはもちろん、ラーメンの美味しそうなこと。鶴田浩二が「美味いだけじゃなく安いのが最高!」と力説してるの、小津監督を代弁しているみたいで面白い。
これらに加えて淡島千景や津島恵子の明るさもあって、倦怠期の夫婦の話にしては華やかでテンポも良い。
そんな中で何度か出てくる、誰もいない部屋をゆっくりズームしていく演出が、危機が迫っていることを暗示しているようで効果的だった。

あと「カロリー軒」の看板いいなあ。キーホルダーにしたい。
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