りっく

国家が破産する日のりっくのレビュー・感想・評価

国家が破産する日(2018年製作の映画)
4.2
またもや韓国近現代史を題材にした見応えたっぷりの傑作エンターテイメント。割と複雑な経済の仕組みを分かりやすく解説しながら、国家の破産の危機を食い止めるところにドラマの焦点を持ってくるのではなく、国家か破産することは確定事項としてありつつ、主に3つの立場の人物に焦点を当て、それぞれにドラマ的な見どころを持たせてみせる。

そんな個々のドラマを縦軸にしながらも、国家や政府の決断が投資者や労働者にどのように影響を及ぼしてしまうかという横軸のドラマも的確に演出してしまう舵取りに脱帽。例えば、政府が財政破綻目前の危機的状況を公開か否か、そんな状況を先読みして株を売買するか否か、労働者が事業拡大の夢を実現するため信用の上で成り立つ手形に半を押すか否か、といったポイントとなるそれぞれの決断の際に、各エピソードを同時間帯で並列に描くことで、これ以上なくエンターテインメントとしての見せ場を盛り上げてみせる。

さらに、20年後=現在の韓国における各登場人物の姿を描いたのも大正解。国家が破綻する体験を経て、ある者は罪悪感を抱きながら巨万の富を得て裕福な生活を送り、ある者は外国人労働者にスパルタ的な教育を施すなど人間性が変わってしまい、またある者は今度こそは絶対に自分の正義を貫くと国家破綻の第二ラウンドのゴングが鳴るのを虎視眈々と狙う。体制に破れ、それでも体制側にファイティングポーズを取り続ける篠原涼子似の主人公の逞しさにやられる。
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