空海花

Fukushima 50の空海花のレビュー・感想・評価

Fukushima 50(2019年製作の映画)
4.2
プロローグから、東日本大震災は始まる。

当時の報道や後に知り得た話などが溢れかえり
怖くて涙が出てきた。
そして大津波、それによって起きてしまった福島第一原発事故。
最悪の事態メルトダウンが恐れられる中
現場はいったいどのような状態だったのか。
あの時私達は、あまり開示されない情報に不安を抱えていた。
「直ちに影響はない」という言葉が連呼されていたのを妙に覚えている。

現場では命を賭して、最悪の事態を防ごうとした人達が居て
どういうことが起きていて
どういうことをしていたのか
全てではないだろうが知ることができる。
正直、現場以外のエピソードの入れ方には?と思うところもあったり
会見も全然それらしくないと思った。
だが、映画の中で悪を作るのではなく
実際にはもっと複雑に絡み合う様々な問題があり、
改めるべきものを改める為の論点がいくつもある。
あれが悪いと決めつけて思考停止になることだけは避けるべき、ということで一旦は置いておく。
オリンピック前、しかも3月に上映しなければならないのと、そしてこの日本とあっては精一杯かもしれない。
とにかく舞台の福島第一原発を描くことに徹したのだろう。
しかし日本人ならば補完してでも理解するべきだ。

それでも現場の作業員が必死に役割を果たそうとしたように、
総理、東電本社陣も含め
役者がそれぞれの役を演じきったように思う。
吉田所長、伊崎ら作業員達は性格も垣間見える描き方をしていて良かった。
不眠不休のままの緊迫感や被爆への恐怖、灼けるような熱さ、それでも何とかしようとする姿に
ほぼ最後まで涙を堪えなければならなかった。

演じきったのは役者の話で、実際には政治家や東電の的を得ない会見も目にしたし
爆発して剥き出しの建屋の映像に唖然としたし
東電社員の家族や避難してきた人への冷たい言葉も耳にしたし
そういったこともハッキリとではないがそっと描くことを忘れていなかった。

自分はといえば直接被災した訳でもなく
報道に滞りを感じながら、計画停電で電車がないので徒歩とバスで仕事に行ったり
周囲の状況や時に感じる温度差にただ戸惑うだけでそのまま時は移ろいでしまった。

思うところが多すぎて
映画としてとても評価しづらい。

日本人なら理解すべきと言ったものの
恐怖を呼び覚まされ辛いのであれば
観ないでほしいとも思う。
ただ人のトップに立つ人は観てほしい、かな。

少なからずやはり抑えた部分は多い。

復興という言葉を使ったからと言って
それが終わったということに必ずしもなる訳ではない筈。
オリンピックは一つの手段であり
まだこれからなのだと。
それは私達次第でもある。

奇しくもコロナウイルスの混乱の最中の上映。
マスクも消毒用アルコールも店頭から消え
トイレットペーパーまですぐ無くなったり。
医療現場や絶対必要な人も居る。
そんなに足りなくなるものなのか。

あれから9年。
私もちょうど1年前に仕事に復帰したので
3月は個人的にも節目だ。


すみません。話が脱線しましたが
以下ネタバレします。







美しい桜並木
張り巡らされたものに胸が締めつけられた。
それでもなお花は美しい。
地球は美しい。


2020劇場鑑賞53本目/54
空海花

空海花