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星に願いをの消費者のレビュー・感想・評価

星に願いを(2019年製作の映画)
3.7
・ジャンル
ドラマ/アクション/ダークファンタジー

・あらすじ
壮絶な経験を幾度も繰り返してきた風俗嬢のイブはあらゆる人々に憎悪を煮えたぎらせていた
やりきれない気持ちを薬物で誤魔化し体を売る日々の中、彼女は家出少女キミと出会う
イブはナンパ男達から彼女を助け、行き場のないキミを自宅で寝泊まりさせる事に
だがやがてキミは死に、不死の存在となり幾度もイブの元に現れる様になる
そんな彼女をイブは何度も殺し続けるのだが…

・感想
「真・事故物件」シリーズを手掛けた佐々木勝己監督の作品
頼れる者もなく自己破壊的な生活を送る風俗嬢イブと不死の家出少女キミの奇妙な絆を描いた内容となっている

虚実入り乱れるストーリー、殺人や怪異、不器用な登場人物達の生き様
そういった物事が複雑な時系列で展開し、説明も後半まで省かれるので人間関係もスッとは飲み込みづらい
加えて低予算の邦画あるあるな声の小ささや雑なミックスのせいでキャラクター名も把握出来ない者までいる始末
それでいて初期衝動的な力強さがどこか漂っていてメッセージ性も伝わってくる不思議な作品だった
百合ともシスターフッドとも付かず、愛憎の間で揺れるイブの苦悩も現実離れしているのに奇妙な生々しさがある

途中までは誰もがそれぞれの立場でもがいている、と苦しみの真っ只中にいる人々を突き放している様にも受け取れる群像劇の様にも見えた
しかし逆にそれがフリとして機能し、自分だけが自分の人生の主人公
理解してもらえない苦しみもまた当事者には現実
だがそれを作り上げているのもまた自分だから自分で振り切らねばならない
そんな不器用な人々へのエールへと変化していく
臭いと言えば臭い内容で半グレや風俗の描写など雑な部分はありつつも刺さる部分はあり、何とも形容し難い魅力が感じられた

時系列の乱雑さも主人公イブのぐちゃぐちゃな心象風景を現している物と捉えれば粗くも強烈な物を感じ取らせる要素として必須だったのかもしれない

惜しかった点としては社会の暗部にフォーカスを当てていながらも濡れ場や殺人、暴力の描写が肝心な所をあまり映さず描かれていた事(遺体バラしとかはそこそこグロめだったけど)
そこを極端に突っ走ってこそより生々しさが増強されたんじゃないかなぁ、と
テーマは厭世観や主観的な苦悩な訳でそれすらファンタジー化しては元も子もないのだから現実は現実として描き切るべきと思った
それこそノワール的な方向で世界観をまとめ上げるか

とはいえ想像していたよりは悪くない作品
せめて登場人物の詳細をそれぞれもっと明瞭に描いてくれていればもっと楽しみやすかったかも

音楽はガレージロックやシューゲイザーなど良い感じだった
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