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恥の多い生涯を送ってきました。
(太宰治。
書くためならなんだってするなんて囁かれる。
“一緒に落ちよう、静子。
死ぬ気で恋、する?”
“お嬢さん、やめときなさいな。こんな悪い先生。奥様がいらっしゃるのよ。”
“大丈夫です。芸術のための恋ですから。奥様もきっと理解してくださいます。”
“なぁ、今も地獄を見てるか?地獄に落ちて書いてるか?家庭があるから落ちられませんか?やだねぇ。女房だの子供だの、壊れちゃ困るもんなんて作家は持っちゃいけねぇんだよ。”
“あれはあれでいじらしいもんですよ。”
“きっとどこか壊れてないと書けないんです。小説なんて。だから、私は全部差し出して彼の方の中へ入っていこう。それでどんな花が咲くか見てみたい。”
(自分の作品のために書き留めた日記を読みたいと言う彼に静子は子供が欲しいと言った。妻子ある彼に。
“人間は恋と革命のために生まれてきたのに。”
“マリアは清いからなにをしてるか分かるわけない。”
“知ってる?レールモントフの詩の一節。やめる貝殻にのみ真珠は宿る。傷ついた者だけが、美しいものを作り出すんだ。”
“死ぬ前に何したい?”
“そりゃ恋だね、やっぱり。”
“奥さんいるのに?”
“そう、死ぬ気で。”
(みんなでいるのに机の下で手繋ぐふたり。。
“家庭があるのに恋するっていうのは不道徳かもしれないけど、矛盾じゃないね。むしろ、真っ当だ。原始的に真っ当だ。人間はね、恋と革命のために生まれてきたんだ。”
“この川怖くて”
“怖い?”
“だって人食い川なんでしょ?入ったら遺体はあがらないって。”
“そりゃ、理想的だ。
僕もそんな風に何も残さず、消え去りたい。”
(メガネを外して、キスをしようとしたら…
“だめです。”
“だめ?なにが?”
“私…”
“大丈夫、君は僕が好きだよ。”
“ねぇさんのせいで、世間に顔向けもできない。”
“世間って誰?どこのだれのこと?”
“は?”
“そんな顔も見えない人たちのことなんてどうでもいい。私は自分のものさしで生きるの。”
“まぁ俺は面白かったけどね、斜陽。”
“当然です。あれは傑作だ。坂口さんのときより売れたんだから。”
“傑作とまでは思わなかったな。お前、女の日記使ったな?”
“参考にね、あの感覚だけ欲しくて。”
“で、引きずられた。女が書いたこととお前の狙いが結局噛み合わなかった。”
“あんたも全然分かってない。”
“分かってるさ、あれは女が捨てられる話じゃない。女が社会を捨てる話だ。な?でもそのことが伝わらないんなら、お前の儀器量不足だ。”
“バカにもわかるように書けってか?”
“バカが読んでも凄まじい小説かけってことだよ。”
“そんなんじゃ足りないさ。”
“みんな可愛いんだよ。みんな俺を求めてるんだよ。応えるしかないだろ?”
“たかが不倫じゃないですか!恋だ、革命だ言ってたかが不倫小説じゃないですか!”
“たかが不倫、じゃあ、お前やってみろよ。”
“やりませんよ。自分のために人を踏み躙るようなこと。”
“お前、俺が平気でやってると思うか?”
“同情をかうつもりなら心の底から軽蔑します。”
“俺はこういう人間なんだよ、それが嫌ならいつでもどっかいってくれ。編集は他にいくらでもいる。”
(風車、子供達の笑顔。つきささった。
(太宰の妻とは見合い結婚、3人の子宝に恵まれるが、仕事(女)で忙しくする太宰。家庭を顧みない彼が他の女とキスしているところを見てしまう。
“私もうダメかもしれない。”
しかし彼女も太宰の小説、言葉の虜であった。
“僕は太宰さんの文学が嫌いです。
やたらと死を匂わせる弱々しい文学が。”
“誰だ!君は。”
“三島です。三島由紀夫。”
“小説家が作品で死にますと書くのは弱さですか。”
“死の匂いでどれだけ客の気を引いても、みんなあなたがどうくたばるかにしか興味を持ちません。あなたは文学を見せ物小屋の工業にしてしまった。本当に客の前で死んでみせる覚悟はあるんですか?”
(無言で自分の首を絞める。
“醜悪だ、こんなの。”
“虚しくはないんですか?何を書いたって誰も本当には理解しない。それが分かってて、何のために書くんですか?”
“やってみたら分かるんじゃないか?あんた、俺のこと好きなんだよ。だからこんなところまでわざわざきたんだろう?”
“最低だ、あなたは。なんでまだ生きてられるんだ。”
(タバコとお酒のせいで肺がやられ、クスリ、女、みんなはどれで死ぬか、賭けたりしているものもいた。咳き込んで血を吐けば、みんなギョッとしてこちらも見やる。
“いい眺めだな。この肺のおかげで、恐ろしき神になった気分だ。”
“家庭にもう戻ろうとしなくても、そんなの意味がないから。壊せばいいんです。そしたら、書きたいものが書けるんでしょ?いつもギリギリで踏みとどまって、死なずに帰ってくる。体を治してここへ帰っても尊敬はしません。あなたはもっとすごいものをかける。壊しなさい。私たちを。そして、本当の傑作を書きなさい。それがあなたのやりたいことでしょう?”
(上の子たち、お願いします。赤子を抱えて、出て行った。
(太宰治も恐ろしいけど、妻も恐ろしいな。
(久しぶりに家へ戻ると、やけに家が片付いていて、娘からお姉さんとお片づけしたのと聞く。涙が溢れて仕方ない。。。
(夜中に帰ってきてはあ!わぁ!変な虫がいる!などと大きな声で起こすが、太宰の帰りに涙を流してしまい、布団から出ないでいると、冬に流石にそんな虫は出ないか。と。そこでむせて、血を吐いてしまう。心配して慌てて飛び出るが、娘も起きてしまい、慌てて娘を抱きしめ、視界を塞いだ。その姿に太宰は笑い、がじゃんと扉を閉めて出て行った。
“おまえを誰よりも愛していました。”
(手紙に綴られたその言葉と、3人の子供と共に奥様は笑顔でこれから生きていくんだなぁと思い、彼女の強さと彼に対する大きな愛がとても素敵でした。