もりりた

ジョジョ・ラビットのもりりたのレビュー・感想・評価

ジョジョ・ラビット(2019年製作の映画)
5.0
10歳のジョジョはヒトラーに心酔する軍国少年。青少年集団ヒトラーユーゲントで兵士としてのトレーニングを積む。生きたウサギを抱えさせられその場で殺す訓練を課せられた後「ジョジョラビット」というあだ名で皆から中傷される存在に。家での生活を余儀なくされる彼が亡き姉の部屋で見つけた不自然な溝。訓練時に入手したダガーで溝に沿って壁を横にズラすと部屋が現れ、奥から突如女性が現れる。


無垢なジョジョが知るリアル
戸惑いの中の子供らしい奮闘が可愛い
相棒のヒトラーはコミカルで
実際の人物像ともかく明るい雰囲気を彩る

エルサとの交流で変わる意識
彼なりのやり方で疑問の本質に向き合う
どんどん成長していく姿が頼もしい

いつでもポジティブな母ロージー
理不尽な状況 命がけの秘密を抱えながら
抑圧に負けじとジョジョに伝える生き方

ビートルスや最後のデヴィット・ボウイ
シーンに入り込んだ音楽の存在感も良い


体は小さくても心は兵士 健気な姿
一方でウサギを逃がすシーンの表情
感情が伝わってくる

エルサやネイサンを冷やかしつつ
悲しませた事を詫びる手紙を書く
不器用 でも気持ちが嬉しい
お腹に生まれた蝶の演出も良かった

圧力下でもウサギを守ろうとしたジョジョ
エルサとの顛末に通じている気がする
「自分のやり方で周りを驚かせてやる!」
企みは優しさを持って達成された


半ユダヤの理不尽な迫害
子供含め民衆に押し付けられた差別感
極端に暗い描写は無いものの
分かりやすさ故に伝わる恐怖は大きい

綺麗な蝶を追った先にある悲劇に
意表を突かれて声を失った

純粋な子供目線で展開するシーン
戦場に変わった街 響く銃声の中
薄くなる意識を保ちながら立ちすくむ

キャンプの訓練とは異なる生々しさ
穏やかなシーンとのギャップもあり
状況の異常さが強調されていた


その先は危険だとユーモアを持って
ジョジョの背中を押すロージー
父を求める息子には炭を口髭にして対応

自身も夫が恋しいはず でも湿っぽくせず
その場を楽しむ意識を教える母の強さ
反戦意識はジョジョに伝わり難かったが
ユーモアや愛の力は確実に刻まれた

ジョジョを救うクレンツェンドルフ大尉
最期を予感した捨て身の行動
勇気ある行動に熱くなった

子供の成長だけでなく周囲の人々にも
一貫した精神が通ったような気がして
映画が持つメッセージの大きさに感動した


悲惨さの中にも光はある
生き続けよ 絶望が最後ではない
希望の言葉に勇気がもらえる

楽しさや思いやりの大事さを気付かせ
辛く悩む人にはそれも意味があると
そっと後押ししてくれる優しい映画でした
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