もりりた

イニシェリン島の精霊のもりりたのレビュー・感想・評価

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
4.0
1923年のイニシェリン島。パードリックは飲み友達のコルムから突然の関係断ちを告げられる。バイオリン演奏に集中するというコルムを説得するが二人の間には溝が広がるばかり。そしてコルムの決意が本物であることを示す出来事が起こる。

小学生のような突然の友達やめた宣言に始まり、お前は退屈だとか兄さんはバカだとか散々なのが面白くて一瞬コメディ映画かと思ったが!コルムがマジでやっちゃってからは一気に重苦しく!しつこく絡むパードリックに妹シボーンの気持ち同様やめとけよと思い、両者臨戦体制になってからはスプラッター映画を覚悟した!テーブルに血しぶきのレッスンとか罰ゲーム過ぎ!アイルランド内戦の暗喩という見方を聞くけど、コルムに翻弄され妹が離れても現状に執着し苦境に追い込まれるパードリックからは変われないことの怖さを感じた!

穏やかに見えるが鬱な雰囲気が漂い、人々は何か希望を見出しギリギリの状態で過ごしている緊張感が伝わってきた。孤独感や不安をコルムとのお喋りで埋めていたパードリックはもちろん、兄想いのシボーンが即日島を出ていく流れからしても現場の疲弊感は想像以上だったんだろうと。DV父を持ちパードリックの人間性やシボーンへの想いが救いだったドミニクもとっくに限界だったんだろう。バランスが崩れた瞬間鬱憤が爆発し過激な行動に至るのが恐ろしい。冷静に早めに逃げ場は確保しないと!

薄暗い島に点在する建物、自分本位な警察や神父、気味の悪い老婆も含めて異様な世界観。結果コメディとは真逆のズシリとシリアスなお話でした!
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