もりりた

ザ・ホエールのもりりたのレビュー・感想・評価

ザ・ホエール(2022年製作の映画)
4.0
肥満症のチャーリーは友人のリズに助けてもらいながら単身生活。症状は深刻で死が間近に迫る彼の元に突如娘のエリーが現れる。父の姿に驚き蔑むエリーに対し渋い顔のリズとやり過ごすチャーリー。各自違う立場でチャーリーと関わった彼らは互いの想いをぶつけ合っていく。

インパクトある巨体だけど体調ボロボロ。常に周囲に気を使う弱気の一方怒りのまま貪り食う時もあり激しい起伏!不安定さに不思議と引き込まれ今までにないタイプの主人公だなと!エリーを想う故にリズに付いた嘘や、家族を置いてきた背景というチャーリーお抱え要件も目が離せないポイント。汚い言葉のサンドバッグ的なチャーリーだけど、エリーや母メアリーの根底には彼の寛容を求める気持ちがあり、複雑な過去ゆえに素直になれないような。単純じゃない各自の思いや関係性が人間らしくて良いなと!

エリーと再会したが再生の道は選ばず死ぬことを止めなかったチャーリー。海の回想シーンは綺麗だったけど絶望は相当に深かったんだなと感じた。それはアランや家族に対する罪という対人関係だけでなく、肥満症への嫌悪感も影響していたような。人目を極度に恐れ、自分はおぞましいかと尋ねる表情は鬼気迫るものがあり。自己嫌悪でどんどん疲弊していったんじゃないかなと。それでも文章表現に関しては確固たる想いがあり、それに応えたエリーの文章を繰り返し口ずさむ場面は愛情が溢れていた!メアリーに対し繰り返しエリーの良さを語り、涙ながらに人生の幸せを願う叫びにも心を打たれた!

各自の気持ちを丁寧に描く好きな型の映画でした。ほぼ家の中で他の状況が見えないけど、再会きっかけにそれぞれがチャーリーの存在を考えている姿を想像させられた!
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