75歳以上を対象に安楽死の権利を与えるプログラムplan75が実施されている日本。角谷ミチは夫を亡くしてから一人で生活していたがあるきっかけで無職に。仕事・住居共に厳しい状況がのし掛かりミチは生きにくさに疲弊していく。
ノンフィクションに思えない作品で、冒頭の高齢者を分断する思考の果てシーンから怖かった！超高齢化の歪みで社会のバランスが崩れた近未来、日本でも普通に起こりそう。他の事務処理と同様に機械的に受付する岡部が地味に怖かったし、死体処理まで請け負う業者の存在、無機質に並んだベッドとマスクは思い描く最期と違い過ぎて拒否感が。ただミチが申し込みに至る顛末からは途方ない辛さも感じられ。生きる絶望と生きる希望の両面が衝撃的だったな！
plan75が通常運用されている設定は現実味があり、暴力沙汰や感情爆発なくずっと穏やかなのがリアルで怖い！間接的な描写も印象的で、ベビーシッターを断られる電話や不動産屋での腫れ物扱い、ミチの人生が明らかになるのも会話のひとセリフという徹底さ。下手に演出過剰にしないのが人物像にも世界観にも合ってたな。コールセンター窓口担当との交流は心温まるシーンだったけど、あくまで一時的だから成立し長く過ごすのは互いに重いわけで。楽しい1ページという捉え方の一方、預かるのは容易ではないという人生の存在感を再認識しました。
生き方は千差万別、幸せの定義も多岐に渡るよなと。孤独な人生を彩る工夫やテクノロジーを知っておくと同時に、既に安楽死を合法化している国と同様、感情論で蓋せず必要性を考えるべきかも！
