MISSATTO

新聞記者のMISSATTOのレビュー・感想・評価

新聞記者(2019年製作の映画)
3.8
普段邦画はほとんど見ないけど、これは終わらない(終わらせられない)うちに見なければと思って見てきました。
そうとは言わなくても、映画の中に出てくる様々な内閣周りの出来事が現政権のあれやこれを思い出させる。
「この国の民主主義は形だけでいいんだ」
このセリフこそ、この映画が鑑賞者に突きつけたい真実なんだと思う。
そして、戦後ゼロ年から面々とこの国の中枢になった権力者はそう考えてきたのではないだろうか。
戦前戦中、戦後直後の歴史が色んな観点から検証されているが、共通しているのは日本人を1番苦しめるのは常に同じ日本人である権力者たちということだ。
この映画でも、その権力や権限を持った者たちが、まるで自らの特権は上から与えられた贈りもののように勘違いし、国民を苦しめる様が描かれていて、しかもそれを楽しんでいるようにさえ見えた。
それを考え、省みる機会になっただけでも十分に見る価値のある映画と言える。
こういう権力を野放しにしないための憲法を変えようと自民党は言う…実現したら「形だけの民主主義」すらなくなってしまうと改めて映画を見て思った。

ただ、映画としては3.3の鑑賞後感。選挙前に見ておくべき映画として勧めたい気持ちを+0.5上乗せ。



邦画としては、極力セリフ説明も過剰な感情演出も抑えられていたけど、役者の演技以外の背景など含めた映像1つで訴えてくるような映画を見慣れていると、どうしても単調で今ひとつダラダラ感が拭えなかった。なにより最後の最後で意味不明なスローモーション演出が出てきた時には、スッと首筋に寒気がした…。

確かにシム・ウンギョンは良い役者だと思うし、設定上アメリカ育ちで母親が韓国人とあるから多少のひっかかりのある日本語発音が有ったとしても仕方ないと思いつつ、やっぱりちょっと…うーん、映画に没入できるまで時間を要したのは否めない。
それはたぶん、例えば新聞社の同僚や上司が何も反応せずにやり取りするのは自然だと思うが、正直この日本においては、彼女のイントネーションで話した瞬間に「ん?」と眉を顰める人間がいないとは思えない現実があるからだ。
そして松坂桃李も、人気俳優として、この映画に出演する気概を感じる良い演技だったとは思うけど…何かが足りない…

それはたぶん、役者の力というよりも、演出などのせいだと思う。
フィクションと言いながらも現実に沿った世界を作るなら僅かなところまで、実際その国に住み人間が見て「あまりに現実的だ」と思うほどまでに詰めて欲しかった。
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