RYOBEER

新聞記者のRYOBEERのレビュー・感想・評価

新聞記者(2019年製作の映画)
1.3
今作は去年鑑賞済みで、余りにネットで見る評価が高く、楽しんだ人たちの気持ちに水を差すのもなぁと思い、スルーしていました。もうそろそろいいかなと…。

まず僕自身、現政府に対して、それなりに不満感・不信感を持っていることに加え、この作品における政治的スタンスとプロパガンダ的な要素"そのもの"に口を挟むつもりはないということを言っておきます。

そもそも作り手の思想はどんな形であれ映画を映画たらしめるひとつの側面であるし、それと別にこちらは、(少なくとも鑑賞中は)個人的なイデオロギー(持ってないけど 笑)をなるべく隅に置いて作品に向き合うことが、ある種公平な評価の仕方だと思っています。
何ならそんなもの飛び越えて「面白ぇ」って思えるものに出会えるから映画観てるんですけどね。

それを抜きにしても、元ネタが実際に起きた事件や出来事なのがバレバレの割には、脚色のやり方が"現政権のイメージを悪くしてやろう"という思惑があまりにも表に出過ぎていて、誤解を与えるような改変も見受けられ、要はそのアウトプットの仕方が気持ち悪くすらあると思いました。
端的に言えば、下手だなと。

内調のオフィスひとつとっても笑ってしまった。あーんな視力ドブに全力投球するような暗〜い部屋で、いかにも悪い事してます的な陰影の付け方で。
少年漫画に出てくる悪の組織の描き方じゃないですか…。

どこにでもある普通の会社と変わらないような明るいオフィスで、淡々と仕事をこなすように反政権派の取締りしてる方がよっぽど狂気じみて恐ろしさ演出できると思うけどなぁ。
(内調自らのネット工作なんかがもし実際にあるなら)きっと現実もそんな感じだろうし。

キャストの演技はそれぞれに素晴らしかったけれど、作り手の意思をキャラクターに乗せず、まるで腹話術の人形のように扱い、言いたいことをそのまま言わせるというのはあまり好きではないです。

最後の加計学園をベースにした大学新設計画の真相の着地点も、あまりにも荒唐無稽で物語としてお粗末だった。
もしこの結末を大真面目に考えたなら「あぁ、そうですか…」とそっと静かに離れていきますが、明らかに恣意的に虚実を織り混ぜ、作品と現実の境界線を曖昧にしているくせに、「これはあくまでフィクションですからね」という逃げ道を作った卑怯な手法だと僕には感じられた。

虚実をごちゃ混ぜにして、現政権に対する思考を都合の良い方へ誘導しようとする。
それって、この作品を作った人たちが糾弾したいであろう対象と、同じくらい卑怯なことしてないかな。
まぁどう感じて考えるかはこちらが勝手にすることなので別にいいけどね。


それで、この映画の関係者で公開された後に行方不明になった人っていたりするんですか?
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