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LIONHEART/ライオンハートのCisaraghiのレビュー・感想・評価

LIONHEART/ライオンハート(2018年製作の映画)
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ライオンハートって何かと思ったらバス会社の名前だった、というので俄然強い興味が湧いた。アフリカの新興国における交通事業の話で、主役は女性。そして、ナイジェリア映画9本目にして、ついにラゴス以外の地方都市がお目見え!その名もエヌグとカノ。どこですか、それ?(※)
  近代的大都市ラゴスと違って、落ち着いていて住みやすそうなエヌグ県の中心エヌグ、人口70万人余。高層ビルがない、自然が近い、家々がゆったり建っている、など要するに日本の地方都市と同じような特徴を備えている。朝は寝床で鶏の鬨の声を聞き、夜になると外の虫の音が賑やかしい、つまりは田舎。そして、そのナイジェリア南東部の田舎をライオンハートのバスが人々を乗せて走る俯瞰映像というのは、想像だけではなかなか思い描けない絵である。

話はこれまで観たノリウッド映画の中では最もメリハリのある手堅い作りで面白かった。全体的な画面の色調もエヌグの土の色のように赤茶色がかって渋く、会社や社長の豪邸のインテリアも木調や茶色の家具主体の落ち着いた上品なもの。抑えたトーンのせいか派手な色や柄の服もあまり目立たない。

企業経営のことはわからないが、後継者はcore value(本質的価値観)を引き継いでこそというアダエゼの考え方は、トヨタ社長の、アメリカの母校バブソン大学での "Do the right thing. If you do the right thing, the money will follow.""Integrity, humility, respect for others, we call it TOYOTA way "というスピーチを思い起こさせる。これまでの映画で見た限りでは、ナイジェリアの企業は世襲が当たり前のようだ。日本では批判されがちな世襲制だけど、ナイジェリアでは世襲はよろしくない、という考え方自体がまだあまりないのかも。(しかし、日本でも95%の企業は家族経営だという。)ライオンハート社も今後血縁を問わず "ファミリー"をどう形作っていくかが問われる。『ライオンハート2』を作っても面白そう。観たい~!

監督主演は、『昨日への道』でも主役だったジェヌヴィーヴ・ナジさん。全く違うキャラクターの女性になりきっていて見事。"Integrity, humility, respect for others"を備えた人物像と言っていいだろう。

イボ語のラップ『オビアグ』が滅茶苦茶カッコよい!彼はナイジェリアのラッパーPhynoだそうだ。
https://youtu.be/4JFZ3-euYNo


(※)エヌグは元イボ人の国・ビアフラ共和国(1967-1970)の首都だったところ。アカヌ・イビアム国際空港がある。カノは北部ニジェール国境から100Km、東西の真ん中に位置するナイジェリア第2の都市。人口は200万人以上。ハウサ人が多い。
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