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グレン・ミラー物語のCisaraghiのレビュー・感想・評価

グレン・ミラー物語(1954年製作の映画)
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映画で学ぼうシリーズ。グレン·ミラーのことはよく考えたら名前くらいしか知らず、かなり終わりの方までグレン·ミラーをデューク·エリントンと勘違いしていた(白人と黒人なのに…)。

曲はデューク·エリントンの曲以上にあまりにも有名で、曲名までは知らなくても大多数の人に聞き覚えがあって、自然環境のように世界の始めからそこにあったかのようなクラシックばかり。といっても、数々の有名な曲のうちグレン·ミラー自身の作曲によるものは「ムーンライト·セレナーデ」くらい。編曲と演奏に人々を魅了するオリジナリティがあったということなのかな。編曲の力ってすごい。
 グレン·ミラー·サウンドが他のバンドの奏でる音とどこがどう違うのかは、映画を観ただけではよく理解できなかったが、既存の楽団の音とは決定的に何かが違ったのだろう。
 ちなみに、クラシック中のクラシック「イン·ザ·ムード」の作曲者については論争があるらしい。

映画は、ジェイムズ·スチュワート演じるグレン·ミラーと、ジューン·アリスン演じる妻ヘレンとの仲睦まじい関係が主軸。この辺りは、映画的脚色がなされているだろうし、どこまで事実に則しているのだろうか?と少し引いて観た。ジューン·アリスンは、登場時にはチャキチャキした気の強そうな印象だったものの、結婚後はそのキャラは鳴りを潜め、どんな時もアイドルのような微笑みを絶やさず、常に一歩引いているが要所ではしっかり夫を支える内助の妻という、健気でよく出来た奥方を演じていた。ものわかりよすぎて、愚妻には共感できなかったが(笑)。
 振ってるのか振ってないのかわからないくらいささやかだったジェイムズ·スチュワートの指揮、グレン・ミラーご本人もこんな感じだったのかな。

愛妻家グレン·ミラー、なんと戦争が始まると妻子を置き、志願して軍隊に行ってしまう。大尉として従軍し、慰問楽団を率いてヨーロッパ各地で米兵たちにこんなゴキゲンなスウィング·ナンバーの数々を聴かせて回っていたのだと思うと、そりゃこんな国相手に戦争したら敗けるよなあ…と毎度の嘆きがここでも。同じように歩くなら、硬い行進曲より「セントルイス·ブルース」に合わせて歩く方が絶対楽しいに決まってる。でも、映画のような黒人と白人が入り混じった行進は、実際はこの時点ではまだ行われていなかったらしい。
 そこから「イン·ザ·ムード」「チャタヌーガ·チュー·チュー」と大軍楽隊の賑やかなライブ演奏場面で盛り上がった後、「茶色の小瓶」をバックに、おそらくノルマンディー上陸作戦の実写映像と、連合軍勝利の新聞の見出しが映される。このあたりは見ていて少々複雑な気持ちになった。

ルイ·アームストロングは、主人公一行がハーレムのクラブでの演奏を見に行くという設定で唐突に登場し、ジャズ仲間たちとセッションしてまたすぐ去る。出色。
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