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天気の子のMKのレビュー・感想・評価

天気の子(2019年製作の映画)
3.8
この無節操な愛情は人類のエゴで、結末は近い未来の現実世界?
そんなメタファではないと思うけど、環境難民の話読んでて天気の子思い出したのでメモ。

相変わらずの破天荒なモラル感と宗教性で全部漂白してピュアピュアなラブストーリーだけ見せつけられた感じ。でもそれってアニメでこそ出来る世界観というか、嫌いじゃないかな、だってアニメってそういうもんだとも思うし。

…たとえ世界中の声なき声に責められたとしても私が全部受け止めてあげる

miwaちゃんの「ヒカリへ」の歌詞をもし可視化させるならこういうことになるのかなぁなんて。
あとなんだか僕の彼女はサイボーグ思い出した。

自分にはやはりファンタジーな作品。
むせかえるような雨の湿度、水分を孕んだ空気に浮かび上がる太陽光のスペクトラム。晴れ上がった世界の蘇るような美しさと、忠実に描写された新宿の街に浮かび上がるこの国の雨の意匠は相変わらずお見事。

今年の長雨が番宣だったんじゃないかと思ってしまうほどの異常気象を思わせるような長雨と、島国ならではの雨や水への信仰を上手く絡ませて、忠実に再現された新宿の雑踏の中で、科学や外的要因に依存しない独特の異世界と物語に引き込む作品力は素直に凄いなぁって思えた。

十代の男女の大袈裟で出鱈目な愛情、そんなものが具現化したらこれぐらい荒唐無稽で可愛くなってしまうのだろうな。
あまりに異世界過ぎてストレート過ぎるから、おっさんな自分でもピュアなラブストーリーとして刺さるものがあった。

多分この結末に違和感というか不謹慎、モラルの喪失を感じてしまうのは、こんな時代でも自分が信仰や慣習に囚われていることの皮肉にさえ感じた。

世界を、未来を変えることのできる少女の存在。そんなものをこの破茶滅茶な物語の中でも押し付けて、信じることが出来る感覚こそがこの国の自然に対する親しみのある接し方そのものなんじゃないかななんて。

よく分からない時代設定と国、民族が設定されていたら違和感もなく受け入れられたとも思うし…

話題作だったり注目される作品になるとなんとなく捻くれて色々と考えてしまうけれど、アニメは滅茶苦茶で子どもが楽しめて大人が真面目に議論し出すものはいい作品なんだと思う。

でも昔の作品みたいな感じで観れたし、普通に面白かった。
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