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HELLO WORLDのRenのレビュー・感想・評価

HELLO WORLD(2019年製作の映画)
3.5
賛否両論が渦巻いていますが、少なくとも仮想世界を舞台にした作品として及第点の完成度だと思ったし、何より前提として楽しめました。色々なものに似ている。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の、過去の人たち目線(自分が過去に行くのではなく、未来から自分が来る)の話だと思ってもらえれば一旦OK。ただし今作の場合、現実の過去ではなく、現実を模して作られた仮想現実の過去が舞台になっています。

「現実では無理でも、せめて記録の中で救いたい」という行動動機、加えて後半明らかになる とある真実が、「仮想空間も現実の一部」「それでも現実の繋がり/温もりを感じたい」というデジタルネイティブ世代にとって普遍の人生観・人類愛の話になっていたため思想的にノりやすかったです。
全体が超デジタルな話なのに、男女の恋愛は図書委員/図書館が中心の超アナログな話になっている点が、恋における人肌の温度感をより如実に感じられてきゅんきゅんする。
途中にサプライズ展開が何回かあるのだけど、それ自体も「現実を完璧にトレースした仮想現実を作り出したらそりゃそうなるよね」という納得感があるもので、個人的には好感触でした。

ただ直実が鼻血を出すのは『サマーウォーズ』だな、とか、ヒゲダンの『イエスタデイ』をバックにダイジェストで展開していく感じは『君の名は。』だな、とか所々少し おダサいオマージュがチラ見えしていたのは否めません。特に後者の演出に関して、『君の名は。』は全劇伴をRADWIMPSが担当していたから成立していたのであって、今作の場合はその演出の唐突さが否めず、没入観を削がれる結果に....。

難解映画との触れ込みで敬遠している人もいるかもしれませんが、大枠は掴めるのではないかと思います。私はディテールこそ全然分からなかったけど、初見で『インセプション』を何となくでも楽しめた人は今作もいける。なので怯まず観て欲しい!そしてその上でどう思った?と語り合いたい。

連想作品
○『バック・トゥ・ザ・フューチャー』
○『アキラ AKIRA』
○『マトリックス』
○『オーロラの彼方へ』
○『サマーウォーズ』
○『インセプション』
○『フリー・ガイ』



《⚠️以下、ネタバレ有り⚠️》










現実をトレースした仮想現実があるなら、その仮想現実内にも仮想現実があって当然。それ自体を3重の入れ子構造として、ある意味でのどんでん返しのネタに使っていたのは面白い!(2027年<2037年<ラストの宇宙)
最初にナオミが「記憶の中でだけでも瑠璃を救いたい」とか言うから、おっ、次世代の人間愛の話か?と思ってしまった....が、やっぱり現実でも生きていてほしい、という悲痛な愛情の話だった。今後もこの感覚は人類から消えることはないのだろうな。

「最後まで席を立つな。この映画は二度始まる。」(『カメラを止めるな!』のキャッチコピーより抜粋)みたいな映画だった。

ただ分からない箇所がめちゃくちゃ多かったのも確かなので、考察を読み漁りたいと思います。
個人的不明点は、
○ ナオミが消えれば攻撃が止まる、のロジック
○ 博士の言っていた開闢にまつわる全て。元々 直実がいた仮想現実が無くなった?っぽい理由。ラスト、直実と瑠璃が「新しい世界だ」的なことを言っていたのは何処?仮想現実が現実になったの?
○ 本当の現実世界で、瑠璃でなく直実が脳死状態になっていた理由
○ 「前半のカラス=2037年のナオミが連れたカラス」、「後半のカラス=脳死の直実を救うため瑠璃が連れたカラス」で合ってる?
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