こたつむり

ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネスのこたつむりのレビュー・感想・評価

4.1
♪ いつでも正しい人なんているのかな
  まあ そんなこと 
  たいした問題じゃないネ

賛否両論と耳にしての観賞でした。
というか前作もそんな感じでしたよね。
ビジュアルは凝っていたけど、物語的には微妙…そんな印象でした。

でも、僕は好きなんです。
特にドクターストレンジというキャラクターが好きなんです。彼は苦境に陥っても諦めませんからね。それは本作でも同じ。今回は“執念深い”と言うかもしれませんが。

あと、本作は作品自体の覚悟が違います。
ぶっちゃけた話、ダークヒーローを謳う他社の追随を許さないレベルで闇深いんですよ。いやぁ。超メジャーなシリーズで描くテーマじゃないですよね。かなり攻めています。

何しろ、アメリカは“家族”が正義。
それを追求する“彼女”への感情移入度は半端じゃない筈です。でも、それを容赦なく突き落とすんですよね。これは間違いなくマーベルの“本気”。上っ面だけを見ていたら選択できないと思います。

勿論、それでいてツボは押さえています。
“アトラクション”としての要求には最低限で応えていますし“今週のビックリドッキリゲスト”は確実に布石。ファンへの目配せを忘れていません。

ただ、その分、感情描写は最低限。
確かに尺を考えたら“削るところは削る”のは当然です。また、観客を信用している証でもあります。「何も語らなくても、ドクターストレンジやワンダの気持ちは分かるだろ?」と言われているんですね。

ゆえに、サム・ライミ監督の十八番であるホラー描写も際立つわけで。ギリギリのバランスで成立したエンターテイメントだと思います。やはり、賛否両論になるもの当然ですね。

まあ、そんなわけで。
確実に「初心者お断り」の物語。
本作を観賞する前に『ワンダヴィジョン』を観るのは必須。じゃないと、本作の面白さは半減どころか皆無になると思います。そして、生温い展開を期待するのはNGですよ。観客にも覚悟を求めていますから。

それに思い返せばマーベルには前科があります。そう。あのナターシャの扱いを考えれば…本作の方向性は通常運転。良くも悪くも、この容赦のなさが大成功の秘訣なんだな。
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