イホウジン

ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえのイホウジンのレビュー・感想・評価

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「ヒトラーvs前衛画家」と言うよりは「ヒトラーvsコレクター」と呼ぶ方がふさわしい作品だった。

美術作品の略奪と戦後の所有権にまつわるドキュメンタリー。ユダヤ人コレクターの所有していた美術作品の多くがナチにより「美術館建設」の名の下に略奪され、「退廃芸術」と称された前衛作家の作品は次々に売り飛ばされていったという事実を見せつけられた。結果的に多くの前衛的な作品がアメリカに流れ現代美術の主導権を決定的なものにしたり、戦後ドイツで現代美術振興のためにドクメンタが開催されるようになったりしているので、美術史を語る上でもナチの蛮行は抜かすことができないのだろう。
戦後の奪われた美術作品の所有権を巡る争いは印象的。当然略奪された作品は元のオーナーに返却すべきだが、所有を証明する書類が紛失したりする中でそう一筋縄では行かなくなっている現実が示された。文化の面でも「戦後」はまだまだ終わっていないのだなと感じた。略奪という意味ではナチに限らず帝国主義時代の植民地からの略奪品も同様な動きがあるのかもしれない。

正直、いらない映像が多かった。演出が雑だったのかもしれない。
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