APO

宮本から君へのAPOのレビュー・感想・評価

宮本から君へ(2019年製作の映画)
3.8
 友人から薦められた本作、遂に鑑賞した。
総じて圧巻だった。

 ドラマを観ていたらより本作が染み込んできたのかもしれない。機会があったら必ず観ようと思う。


宮本浩(池松壮亮)は不器用を超えてかなりぶっ飛んでいる。
気持ちが真っ直ぐ過ぎて、周りが全く見えていない。
脳内が小学校低学年並みで、"大人"にはとても見えない。
彼の目に写ってくるものは靖子(蒼井優)と、自分自身のプライド。

鑑賞中はほとんどの時間イライラしてました。
登場人物の誰を観ていても眉間にシワが寄る。
大野(佐藤二郎)だけはクスっとさせてくれるオヤジだった。
どの時代のどこに行けば、宮本のような人間に会えるのだろうか。いや、時代とかは関係ないのかもしれない。
こんなに制御のきかない人間は現実世界で居たら、とてつもなく生きにくいだろう。
このフィクションは現代を生きる若者が観たら、ある意味とてつもなく新鮮だろう。
不器用などという言葉では収まりきらないスタイル。
表面上は奥手なのだが、一度線が外れると手が付けられないタイプ。
その線が何故外れたのか。
それは愛する女性を傷つけられたから。
そして同時に自身のプライドも傷付けられた。
根は良い人でお人好し。一生懸命に生きている熱い人。

宮本が愛した女性、靖子もかなり繊細な不器用人間。
強めの口調で強がるが、中身はか細く弱い人間。
ただ一番人間らしい。
全力で笑い、全力で怒り、どストレート。
宮本の人間性はある種靖子から来るものもあるだろう。


 本作主演を演じ切った池松壮亮が喝采されるのも納得。熱い、熱過ぎる男をただめちゃめちゃに熱苦しいだけでなく、どこか究極に繊細な部分も同時に伝える力量と才能。(実際に役のため前歯を抜こうとしていたらしいが、さすがに止められたらしい。)
それに加えて、靖子を全身全霊で演じた蒼井優という日本の名女優。他に靖子を演じることが出来る役者がいるであろうか。


 キャラクター達に対する共感はゼロ。
真っ直ぐ過ぎて、私からしたら日常の中の非現実を見せられ過ぎて終始晴れた気持ちにはならなかった。
 が、役者陣の魂を垣間見れた気がして、いつの間にか本作に引き込まれていた。
本作に出会えて感謝している限り。


因みに、字幕鑑賞がおすすめ。


宮本浩次 "Do you remember?"

宮本から
男ですもの 女なんだよ
いききっちゃうんだ
君へ
APO

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