乙郎さん

宮本から君への乙郎さんのレビュー・感想・評価

宮本から君へ(2019年製作の映画)
3.0
原作既読。正直に言えば、真利子監督のカサヴェテス的な演出意図と、原作の持つ漫画的な娯楽部分が噛み合っていない印象がある。時系列のフラッシュバックも効果的でない。
ただ、俺は宮本を否定できない。
ある意味、宮本が羨ましい。
子供を持つにあたって、どうしたって父親は母親以上の痛みを持つことができない。上の人に盾突き、歯や指を折られなければ父親になれないと言われたら躊躇するかもしれない。この映画は、宮本はそんな俺に横っ面を食らわせる。
池松壮亮や蒼井優の演技も含めて、「私にはできない」が間違いなく凄いし胸を撃つ。あと新井英樹作品によく出てくるような鄙びた居酒屋。そこで繰り広げられるのが現在のPC基準でアウトなやり取りで、その次のシークエンスがあの惨劇であることも含めて興味深い。
ラストは泣いた。でもこれは原作でも泣いたし、どうしても漫画を映画に写し取る時点で客観性が付与されてしまうのは、この原作にとってはマイナスだったと思う。ただ、やはり親になったタイミングで見たこともあって忘れ難い。
乙郎さん

乙郎さん