作家ロマン・ガリの自叙伝を元に、壮絶な半生を描いた作品。
ユダヤ系ロシア移民で、母と二人ポーランドで暮らす。
気の強くおそらく才覚もある母は、帽子や服飾の商売をしつつ、女手一つで息子を育て英才教育も試みる。
息子は作家になり、士官になり、大使になり、とにかくビッグになると信じて疑わない。
息子は多少うんざりしつつも
母の愛を受け、それに応えようとする。
親の過剰な愛というには
時代の影響もあり簡単には言えない。
ユダヤ系への差別やいじめ。
自分や母への侮辱。屈辱。
それが根底にあるからこそ
ロマンは母の望みに応えようとするし
守らなくてはと思っている。
マザコンだとか投影だとか今ならとやかく言えるけれどこれはもはや彼の命題である。
それでも彼は母を愛しているし
かといって閉じたマザコンではない。
イケメンだから女の子にもモテモテ。
実生活でも「勝手にしやがれ」のジーン・セバーグと結婚したり、賞も取ったし、わりと華やかだったのではないかと。
フランスに移ってからも民族の差別は続く。
大学から戻り空軍に入ったけれど、フランスは停戦状態に。
母の教えが心に刻まれている彼はフランス自由軍に入り、戦うことを選択する。
『夜明けの約束』という原作と原題がある。
邦題がなぜこうなったのかは解せない。
手紙は確かに大事な要素と展開になっているが
これは夜明けに意味がたくさん詰まっている。
手紙はある意味飛び出す手紙だと思った。
母は激しいが
普通を当てはめても仕方ない気がする。
半生だが物語になっている。
脚色については少し美化を感じる。
息子役のピエール・ニネの演技が良かった。
エンドロールのピアノの音も良かった。
彼のこの後の人生も激しかったのではないかと思う。
2020劇場鑑賞21本目