デル・トロ絶賛にも納得というか、デル・トロのお伽噺系作品が好きな人は絶対に観に行った方がいい。あと変態を自称している人も観に行った方がいい。自称変態でデル・トロのお伽噺系が好きな自分はめっちゃ楽しめた。
北欧の寒々しさとジメジメした森林の雰囲気も相俟って神話の輝きを纏っている今作。異形の者たちのラブストーリーが次第に異様な次元へと突入していく展開は、人間離れしたダークファンタジーとして完全に成功していると思うし、精巧な特殊メイクはああいうビジュアルの役者が本当にいるのではないかと錯覚するほど核となる2人の演技含めてしっかりと作り込まれている。
人より優れているという部分で嗅覚を選択したのも、後々明かされる主人公の本当の姿を考えればいいチョイスだと思うし、動物とは心を通わせられるという感じもキャラクター造形として神秘的で実に良い。
ファーストシーンからただならぬ雰囲気が漂っていて、一体どこへ連れて行かれるのか分からないストーリーも映画以前にお話として細かいところが気にならないほど、観客がその世界に入り込めるように緻密な設定が施されている。それに伴った映像表現もメイクだけじゃなく、後半に出てくるある存在含めて衝撃的で危ういバランスの上に作り上げられていて面白い。
ジッと生活を追っているだけに見えて、奇妙な世界観が隅々まで丁寧に描写されているこの作品。大人のファンタジーとして、タイトルの意味も考えさせられるようなものになっているし、誰もが見た目や偏見で目に見えずとも引いてしまいがちな境界線の卑しさとそれがもたらす繋がりについての物語。
是非とも夜に、レイトショーでゆったりと楽しんでいただきたい独特な作品です。
