りっく

ボーダー 二つの世界のりっくのレビュー・感想・評価

ボーダー 二つの世界(2018年製作の映画)
4.0
ある女性の味気ない日常からはじまり、似た者同士が出逢うラブストーリー、まさに獣同士がお互いを貪るようなセックス、森の中を妖精のように全裸で駆け回るメルヘン、子供の人身売買が絡んだサスペンス、そして母と子のヒューマンドラマと、全体のトーンは静かだが、目まぐるしくジャンルを変貌させる異様さが際立つ作品。

大きく捉えればファンタジーなのだろうが、このようなアプローチで世界を描けるのかと感心してしまう。観客も、主人公の女性もおそらく抱いているであろう、自己存在と世界の違和感を増幅させていき、アイデンティティや自分の居場所や存在意義という普遍的なテーマへときちんと落とし込むオリジナリティ溢れる物語に引き込まれる。

また主演の2人もまた見事で、この顔の俳優を見つけてきたことが大きな勝因。目の上の骨が異常に出っ張っていて目が陥没しているように見え、また鼻の形もどこか歪で、その彫りの深さがどこかこの世のものではない異様さを放つと同時に、そのような意味では似たような形状の顔をふたつ画面に並べ向き合わせることで、この世界観を成立させてしまっている。
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