ブライアン・デ・パルマの『パッション』以来の久しぶりの監督作。
コペンハーゲンの中年刑事が同僚を殺した犯人を追う内に巨大なテロ事件へ巻き込まれていくサスペンス。
デンマーク警察、ISIS、CIAと様々な立場の思惑が交差する物語でありながら、最近の映画にしては恐ろしいほどツイストがかかっておらず、とてもシンプルなストーリーとなっている。多くの観客は簡単で分かりやすくて良い、というより、薄味で物足りなく感じると思う。
往年のデパルマらしい、というか昔の映画で見たような演出が随所に現れており、ニヤリとさせられるシーンは多くあるのだが、予算の関係か、どれも地味な印象は拭えず、デパルマのケレン味を欲するコアファンも大満足とは言えない出来だとは思う。
しかしながら、やはり同僚刑事が殺され、犯人を取り逃がす前半のスリリングなシーンはクラシカルなサスペンスの様式の強度を感じさせるシーンは良かった。後半の闘牛場でのシーンも前半くらいの盛り上がりが有れば評価が変わっていたかもしれない。
ともあれ、デパルマ監督の新しい作品を見られただけでも大満足。『ゲーム・オブ・スローンズ』終了直後のキャリア的に超重要な時期にこの作品を選んだニコライ・コスター=ワルドーはもっと称賛されるべきだ。