のほほんさん

15ミニッツ・ウォーののほほんさんのレビュー・感想・評価

15ミニッツ・ウォー(2019年製作の映画)
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緊迫感溢れる予告編だったから気になっていたのをやっと観られた。いやはや、凄い映画だった。

何が起こるかは予告で知っていたが、まずその始まり方が唐突。ほんの一瞬の隙を突いて始まる。あっという間に物語の舞台にたどり着く。

特殊部隊の面々が個性的。幼い子供を持つリーダーに、常にパイプ咥えてるやつ、恋人にプロポーズを控えたお喋り、動けるのか不安な陽気なマザコン、無口で何考えてるかわからんやつ。
イマイチ凄腕に見えないのだが、一度作戦が始まると凄い。

以前スナイパーの小説を読んだ時、撃つ時の能力も勿論だけど、それ以上に待つことの大変さが描かれていた。

本作でも彼らはとにかく待つ。炎天下の僅かなスペースにある狙撃ポイントでひたすら待つ。
それも、待つのはチャンスではなくて離れたパリからの命令。パリは「あなた達の何が特殊なのか」を証明して、とか言った割にはいつまでもゴーサインを出さない。

テロリストが1人になるまで攻撃しない、という現場の状況を無視したまま、ただ時間だけが過ぎて行く。
テロリストは苛立ち、特殊部隊は疲弊し、子供達も限界が近づいてくる。

フランス最後の植民地のジブチ。独立を求めるテロリストと、隣国のソマリアのバックにはソ連。人質の子供とその先生はアメリカ人で、CIAからも人が来ている。
冷戦下でこれだけの要素があったら、政治的にかなり複雑だということは分かる。そのせめぎ合いの緊迫感も凄まじいものがあったと思う。しかし本作ではそこがあえてだと思うが端折られていて、最前線で闘う人々のヒリヒリした感覚。

作戦決行時に子供が動かないよう、差し入れの水に睡眠薬を混ぜるという奇策。子供の為に自ら出向き人質となった教師の勇気。
そしてついにリーダーの独断で始まった作戦は、これまでの緊張が弾かれたように始まり、圧巻。スナイパー達がいかに凄腕であるかは、全員が一斉に射撃してターゲットを同時に倒すという凄技に止まらず、銃弾飛び交う中を武器を持つ者だけを確実に射止め、味方の外人部隊の援護がない中相手を制圧していく。
このクライマックスの戦闘シーンは本当に凄まじかった。

しかし、この我慢して我慢してバーン!凄腕の奴等が大活躍!とアメリカ映画なら確実になるところ、本作においてはそんな爽快感は皆無。

この作戦によって助かった人達は良かろうが、だからと言って誰かが幸せになった訳ではない。
途中でリーダーの、俺たちはやるべきことをやる、英雄ごっこじゃない、なんてセリフがあった。彼らのその働きは英雄的であるにもかかわらず、その命懸けで任務を遂行した結果、彼らが得たのはむしろ喪失感だったり虚無感だったのではないか。

そんな後味の暗さも含め、素晴らしい作品だった