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閉鎖病棟ーそれぞれの朝ーのdm10foreverのレビュー・感想・評価

閉鎖病棟ーそれぞれの朝ー(2019年製作の映画)
3.8
【輪】

私たちが暮らす社会では程度の違いこそあれ「輪」に属することが求められる。
それは家族という最小単位に留まらず、学校、部活、会社、サークル・・・サークルなんて、まんま読んで字の如くだよね。

でも、10人人間がいれば10通りの個性があるように、全員が同じ考えを持つわけではないし同じ方向を見るわけでもない。
そしていつしか「大きな輪」はいくつも分かれて沢山の「小さな輪」を作る。

この物語に限らず「精神病院(閉鎖病棟)」に入っている人たちは、その小さな輪にすら入っていない人たち。
「入れてもらえなかった」
「入れなかった」
「入らなかった」・・・
理由はそれぞれかもしれない。
だけど、社会という「多数が構成する輪」に属することが出来ない人たち。

そして彼らが入る「病院」という場所。
そこでは境遇も症状も価値観もまるで違う人たちが「十把一絡げ」のようにまとめられている。そしてそこで歪な「擬似の輪」が出来上がる。

ちょっと例えは違うかもしれないけど、私たちは性的マイノリティの方々を「LGBTQ」と括る。それはいつから、何処からなのかも僕はよく知らないけど、今はそういう括りで呼ばれている。そうして少しずつ存在をアピールすることで市民権を得ている。
これ自体は何とも思わない・・何とも~って言ったら語弊があるか。
普通のことが普通に言える世の中になったんだなっていうか・・・。
逆に特別なことにすることで対立や差別を生むことにもなりかねないから。
でも、実は彼らを「LGBTQ」っていう一括りで呼ぶのは最初の導入の時だけであって、本質的に個々の抱えているものがそれぞれ違っているというところまで突き詰めないと理解とは言えない。本来は「L」も「G」も「B」も「T」も全く違うものだし、同じカテゴリーに当てはめたって程度が全然違う場合だってある。
それでもそこにいることで「輪」という安全ネットが自分たちの「居場所」となるから手を繋ぐ。
この作品で描かれる「閉鎖病棟」は精神病院の中でもかなり「受け皿」に近い役割を担っている病院であると感じた。
通常であれば、あそこまで攻撃的な覚せい剤中毒患者を、他の患者との「輪」の中に入れない。まるで肉食動物と草食動物を同じ檻の中で飼っているようなものだからね。

でもそうせざるを得ない状況なのかもしれないっていうのは、今の日本の状況を考えてもよくわかる。
精神疾患患者に対する精神病院が少なすぎるのよ、絶対的に。
というか、病院数はひょっとしたら足りているのかもしれないけど、日に日に社会という「輪」から外れていく人が増えていく現状で、受け皿の絶対数が足りていない。

それは物語の中で秀丸が精神病院に入れられたという状況からも察することが出来る。
彼は過去に起こした殺人事件によって死刑となったが、刑が執行されても死なずに生きながらえてしまった。
しかし、日本の法制度上「死刑を執行すること」が死刑であり、確実に殺すこととはまた別の次元の問題となっている。
結果、彼は日本のシステムによって強制的に「輪」に入ることを許されない存在として人目を忍ぶ場所へと追いやられていたのだ。

ここには社会という「輪」には入れなかった人間の居場所があるのか?

覚せい剤中毒?のせいでとにかく粗暴で周囲から煙たがられている重宗や、いつも着飾って外出して家族と過ごすと「言っていた」石田さん。
社会に居場所を見出せなかった彼らにとって、ここは居場所だったんだろうか?

「任意入院」というシステムは始めて知った。
そもそも医師が病気と診断しないと治療は開始されないと思ってたから。
でも、そのお陰で序盤に抱いていた違和感は少し解消された。
入院患者のレベルがあまりにも違いすぎて、言葉は悪いけど「これじゃホントに動物園だわ」と思ってたから。
それくらい秀丸やチュウさん、由紀ちゃんは普通の人だった。
(チュウさんの発作もね・・・いるよ、あれくらいなら。社会の輪の中にも)

石田さんが遺体で見つかり、遺骨となって病院に戻ってきた時、
「海の近くで育ったって言ってたもんね・・・海の近くで死にたかったのかな・・」
「でも、またここ(病院)に戻ってきてしまった・・・」
それは他に行き場所がないという、彼らにとっては「安心・安全」の裏にある「絶望感」。
自分に正直に「ピュア」に生きている彼らは、社会という「輪」には帰れないのだ。




意図的なのか綾野剛は「楽園」と同じように、ちょっと「輪」と距離を置いてしまう優しい青年役。
かと思えば、由紀ちゃんのお母さん役(超ビッチ)の片岡礼子さんや、チュウさんのお母さん役の根岸季衣さんも「楽園組」ですね。
なんか変な感じ。根岸さんなんてどっちも同じような役だし(笑)


そして・・・小松菜奈ですわ。

まぁ救いがない。とことん不幸。彼女なんか悪いことした?っていうくらいに。
でも・・・・可愛い。
ゴメンなさい。なんか彼女の切れ味鋭い目つきと、時折見せる優しい笑顔のギャップにやられています・・・。
スクリーン映えする女優さんの一人ですよね。
はぁ満足。

あと忘れられないのが平岩紙の目。
とんでもない存在感。凄く引き込まれる。
淡々とした演技なのに熱がある。うまい女優さんだな~と改めて感心。

物語としては「閉鎖病棟」という設定がそこまで必要だったか?という若干のもやもやもありつつ、それでもよくまとまっていた方なのかな・・・とは思います。