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フォードvsフェラーリのRenのレビュー・感想・評価

フォードvsフェラーリ(2019年製作の映画)
4.0
めっちゃ面白かった!自分は車に知識も愛着も無いけど、そんなこと一切関係無く楽しめる、誰にでもオススメできるアツい映画だった。劇場鑑賞するべきだった。

いきなり違う映画の話から入って恐縮ですが、ピクサーの『カーズ』を初めて観たとき、アニメってこんなことできるの⁉︎というほど綺麗な映像、疾走感、カッコいいカメラワークと音響、レースを盛り上げる音楽の全てに(初鑑賞時は7歳だったのでこんなちゃんと分析はしていなかったけど)夢中になった記憶がある。そして今作を観て、当時のその感覚がぶわっとフラッシュバックした。あのアニメの興奮が時を超え、完璧な実写で再現されたような高揚感!

企業競争的側面ももちろん前に出てはいるけど、基本的には男の意地と意地の話、スポ根ムービーとして超シンプルにノれるのが良かった。車&スポ根なんて男ウケ(この言い方は好きではないけど敢えてこう書く)映画でしょうと捉えられてしまいそうだけど、家族の話、会社・縦社会・主従関係の話、技術者・職人の話など多面的にスポットを当てているため、あくまでも間口は広く作られているのが素晴らしい。

レースでクラッシュが起こるたびに、怖いとか迫力がある以外の「レースまでの道のりが霧散した切なさ」に似た感情が生まれたの初めてかも。そのレースシーンでさえ、フォードとフェラーリにしかスポットを当てない潔さも良い。

タイトルの「vs フェラーリ」の部分はどこへやらと思うくらいフォード目線で語られるのだけど、フェラーリの信念や社風描写も為されるためアンフェアさは感じなかった。それどころかフォードの上層部の言動や、何なら主人公・キャロルにすら「えっ」と思う部分があり(ナット落とすところでちょっと引いてしまった)、特定の団体や個人を露骨に崇め奉ってヨイショしようとしていなかったのが偉い。
それ故に「なぜこの時代にこの作品を撮ったの?」というヘンな疑問も無く、全時代に通ずるプロフェッショナルの熱い話として爽やかに観られたのが好印象だった。

第92回アカデミーの作品賞ノミネート作品は、自分の琴線に触れまくるものが多くて最高(『パラサイト 半地下の家族』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』『1917 命をかけた伝令』『ジョジョ・ラビット』etc)。今作も例に漏れず、とても好きな作品になった。
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