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DUNE/デューン 砂の惑星のKuutaのレビュー・感想・評価

DUNE/デューン 砂の惑星(2020年製作の映画)
3.5
ホドロフスキー版や、リンチ版が成功していたら…そんな「理想のDUNE」に固執していたら、DUNEの映像化は永遠に不可能だ。今の映画界で、この規模のSFを撮れるのはヴィルヌーヴしかいない。DUNEを今すぐに、確実に映画にしたいのであれば、これが最適解なんだろう。

ヴィルヌーヴだからこそ撮れた映画であり、良くも悪くも彼らしく、無駄を削ぎ落とした内容だった。

人によって毀誉褒貶の激しいヴィルヌーヴ先生。私は基本今まで好意的に見てきたし、ブレードランナーも良かった派なので結構期待していたが、遂に来てしまった。彼の映画を「眠い」と感じる時が…(7:25の回で見たのを差し引いても)

カラダンの海から馬鹿でかい宇宙船が浮上する所はぶち上がったが、デューンでの砂漠描写がもう一つ乗れなかった。「アラビアのロレンス」がオールタイムベストの私からすると、砂漠をもっともっと美しく撮って欲しい。そんな暑そうでもないし。砂と対峙する中で生じる魂の邂逅…のようなドラマを読み取ることができなかった。母息子の砂漠での逃亡劇も(原作がそうだからどうしようもないのだが)どうも起伏に欠ける。決闘のところで寝落ちしかけてしまった。

(ロレンスは遠景をどーんと捉えたカットだけでなく、室内での巧みな撮影や、丁寧な演出、セリフの面白さ、役者の演技と総合的な「映画」としての魅力がある。今作はビジュアルの力で一本調子に殴ってくる映像集、という感じ)

・魔女が宇宙船で降り立つ場面、ハンスジマーも絶好調で楽しい。箱の試練で、ポールが言葉を呟いて耐えるのではなく、母親が代わりに念じ続けるのが実にヴィルヌーヴ。

・ハルコンネン男爵はリンチ版もかなり良かったが、今作も魅力的だった。家庭用ミストサウナ、美肌泥風呂、正体不明の肉を食べてる場面。なんか健康的。

・運命の女性を夢に見るが、母の声で名前を呼ばれる。相当気持ち悪い。予知夢では話が進まない。何度もゼンデイヤを映して「伏線」を張るより、目の前の砂漠を撮って欲しいと思った。

・アラブ系の「ジハード」による世界秩序の転覆、という原作ストーリーを今の世相を踏まえてどうまとめるのか、SWでグダグダになった血統主義との現代的な向き合い方といった、個人的に抱いていた物語上の興味は次作以降へと持ち越されており、評価し難い。フォースの覚醒公開時に高得点を付けて後で悲しい気持ちになった経験もあり、シリーズの全貌が見えてから改めて評価したい。
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