ロード・オブ・ザ・リングに並ぶ
一大叙事詩的原作の砂の惑星。
歴史があり、根強いファンがいて
一本の映画に収まらない長編は
映像化が困難を極めるというのも
容易に想像できる。
まず大長編の原作のエッセンスを失わず
何処を活かして何処を切るか、を
見極めて脚本にしなくてはいけない。
脚本にしたものの、その話で一体
どれぐらいの予算がかかるのか?
出演者は?一本で済ますのかシリーズか?
そしてその映像化の指揮をとるのは?
デューンは過去2回、ここで躓く。
1回目はホドロフスキー。
2回目はデビット・リンチ。
・・・今思えばすげぇ人選だ(笑)
ホドロフスキーがいかにぶっ飛んだ
デューンを製作しようとしてたかは
見応えのあるドキュメンタリー
「ホドロフスキーのデューン」を
観れば一目瞭然。
しかし製作のかなり早い段階で無念の頓挫。
キャストやクルーがとにかく凄いメンツ
だったので正直、観てみたかった。
そして次に白羽の矢がたったのが
デビット・リンチ。
エレファント・マンで一躍注目を集めた
リンチをプロデューサーが大抜擢。
しかし、リンチの作家性と興行重視の
映画会社が合うはずもなく映画は無惨に
ぶつ切りで継ぎはぎな物語になって
しまい興行も批評も大惨敗。
それでも映像的にはリンチの変態性が
活かされているシーンも多々ある。
そして前作から30年近く経とうした
ある日、デューンの再映画化の話が
耳に入る。
ま、また無謀な事を・・懲りないなぁー
なんて思った矢先、監督が
個人的にもファンであるヴィルヌーヴに
決まったという一報が。
いやもうこれ以上ない人選だと思った。
しかしブレードランナーといい
デューンといい、困難な題材を
引き受けちゃう人だなぁーと
感心したもんだ(笑)
ヴィルヌーヴの素晴らしい点は
作家性と娯楽性のバランス感覚。
ボーダーラインにしてもメッセージに
してもその両方がちゃんと確立されて
おり、単純なアクション映画やSF映画じゃ
なく、強く訴えるメッセージ性が
明確になっている。
そしてストーリーを語る上で重要な
映像としての魅せ方が上手い。
SF叙事詩の括りで言えば
ブレードランナーの続編やメッセージでも
実証済みで、架空の世界観のビジュアルが
素晴らしい。
本作デューンに於いてもその力量は
遺憾なく発揮されており
デューンの世界にどっぷり浸る事が
出来る。
何もない砂漠でも映像がいちいち綺麗だ
(笑)
そして多分、ヴィルヌーヴに浮遊物を
描かせたら右に出るものはいない。
メッセージのバカウケや
ブレードランナーのスピナー
そして本作の宇宙船やヘリトンボなど
デザインはもちろん、動き方や大きさ
質量、音までこだわり抜いた浮遊物は
観ていて気持ちがいい。
コケたら終わりの二部作制に果敢に挑み
叙事詩としての壮大なスケール感と
SF映画としての娯楽性を上手く融合する
事に成功しており、複雑な登場人物の
関係性やデューン独特の設定など
そこまで難解になっていない脚本も
素晴らしい。
ただ、やっぱり全く予備知識がないと
人物相関図を頭で描いてるうちに
どんどん話が進んでいくので
誰が誰でどの家系でどんな関係?が
ぐちゃぐちゃになるから要注意(笑)
本作はあくまで第1作目であり
真価を問われるのは次の第2作目を
鑑賞してからにはなるが、本作を観ると
多分、うん、きっと
素晴らしい続編を見せてくれる、はず。
来年公開予定だが、時間が経つとまた
人物関係が分からなくなるかもだから
パート2を観る前はパート1の再鑑賞は
必須だろう。
本作は諸事情で映画館で
鑑賞出来なかったのが悔やまれるが
続編は必ず大画面の大音量の映画館に
観に行こう。