恭介

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎の恭介のレビュー・感想・評価

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)
3.9
10年ほど前に鳥取に行った時
鬼太郎ロードを訪れて

目玉おやじまんじゅうや
一反もめんイカ焼きを食べながら

妖怪スタンプの
コンプリート証明書が欲しくて
いい歳したオッさんが
血眼になって
ロード中に散らばる妖怪ブロンズ像を
探した。

さらに妖怪部屋がある旅館に泊まり
壁一面のヌリカベの前で嬉々として
写真を撮った。

このオッさんらしからぬ行動原理は
幼い頃から水木先生の
オドロオドロシイ作画と妖怪について
詳しく解説された妖怪大事典などを
何冊も集め読み漁ってたところから
きている。

なので自分の中では
割と可愛くキャラクター化された
鬼太郎はちょっと違和感があって
TVアニメはあまり観ていなかった。

やっぱり妖怪は畏怖の念を抱く
存在、という凝り固まった固定観念が
幼少期の妖怪大事典で植え付けられて
しまったから、明るい鬼太郎には
馴染めなかった笑

本作にはそんな妖怪本来の
オドロオドロしさが上手く加味され
大人を対象とした鬼太郎映画として
見応えがあった。

皆さんがおっしゃる通り
時代背景や雰囲気は横溝正史の
犬神家の一族と被るミステリー仕立て。
特に前半は妖怪らしい妖怪は
出てこない。

更に戦場で左腕を失うほどの
死戦を潜り抜けた
水木先生の一貫した「戦争は醜く残酷」
と言いう思いも継承しており
PG12という鬼太郎らしからぬ
レイティングからも監督をはじめ
製作側からの本気度がひしひしと
伝わってくる。

遺産相続、戦争、金儲け主義
人間の持つ負の感情、行動に
翻弄され利用される幽霊族や妖怪たち。

本作に出てくる人間の大半は
そんな負のオーラに満ちているキャラ
ばかりだ。

主人公の水木ですら、出世欲が
行動原理となっている。

対して幽霊族のゲゲ郎は
幽霊族でありながらも人間に慈愛の
心で接してきた妻を一途に
探し続けている。

彼らはやはり畏怖の念を抱く存在で
人間はただの恐怖、恐ろしい存在と
描かれている対比も面白い。

ラストは鬼太郎の誕生に繋がり
後の鬼太郎が妖怪と人間とを繋ぐ
存在になるのは、このゲゲ郎夫婦の
子供だから、という鬼太郎の
キャラクター設定に説得力が増す
構成も素晴らしい。

今の時代に本作のような
子供の動員が見込みずらい
下手したら大コケするリスクを
背負って鬼太郎映画を製作してくれた事に
感謝しかない。

妖怪大事典、どっかにあるかなー
(引越しの時にブックオフに売り飛ばした罰当たりな記憶がある・・笑)
本作を観てまたあのオドロオドロしくも
愛すべき妖怪たちの世界に
浸りたくなった。
恭介

恭介