空海花

グレース・オブ・ゴッド 告発の時の空海花のレビュー・感想・評価

4.3
今回の映画館dayで1番観たかった作品。
公開時も訴訟が続いていた神父による性的虐待事件を描いたフランソワ・オゾン監督の実話物。
オゾン監督がこういう作品を撮ったらどうなるのだろう??


これまでの作風とは異なり、真摯に現実を記していくようなストーリー。
ただオゾン監督の人物や心情の深い部分の描き方こそが観たい部分でもあり、
今作はその更なる現出を感じて、唸った。

舞台は仏リヨンの街、そびえ立つ大聖堂から始まる。
メルヴィル・プポー演じる主人公アレクサンドルの物語かと思いきや、それはメールの行き交いで紡がれていくプロローグ。
美しいテンポだが、内容は重苦しい。

そしてドゥニ・メノーシ演じるフランソワと
スワン・アルロー演じるエマニュエル、
2人の物語が続き、多層に折り重なる。
ストーリーテリングの引き継がれ方が非常にナチュラルで巧い。

三者は被害者の会で一同に会して
また時に三様の苦悩や望みが映し出される。
どれも印象的で生々しい見事な演出。
直接的な映像の表現はなく
ただただ神父の笑顔と握手の気持ち悪さが際立つ。
これ「スポットライト~」でも感じたが
どこにあってもこういう人は悪びれることが全くない。何て病的な。
嫌悪感と共に大きな落胆を覚える。

家族や周囲の人達の苦悩、軋轢も丁寧に描かれる。
教会の罪は重いが、こうして告発が成功の兆しを見られた時に浮上する疑問
“どうしてあの時何もしてくれなかったのか”
辛く引き裂かれそうだった。
もはや神に問う問題ではないのだ。

アレクサンドルは「教会を救いたい」と言った。教会と信仰は別だと考えている。
でも息子の「それでも神を信じる?」の質問に答えることができない。

ゴールドの色彩は、本来、神聖な光である。
この色をこの題材でここまで美しく撮れる人はオゾン監督をおいて他にないだろう。

強大な権威、教会を相手にした裁判が進行形の中での製作、上映を、レベルの高い映画として実現したことは、被害者へのエールになったと信じている。
行動力と勇気に敬意を。


2020劇場鑑賞No.80/111


スコア付けがたく
レビューを書く前に「スポットライト」を観ました。
それはまた別の機会に。
空海花

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