クーベルタンはな

パドルトンのクーベルタンはなのレビュー・感想・評価

パドルトン(2019年製作の映画)
3.8
主人公は小さな町に暮らすマイケルとアンディだ。マイケルが末期ガンで余命宣告を受け安楽死を選択。宣告の場に同席していたアンディはマイケル本人より動揺していた。2人は恋愛関係ではなく、同じアパートの1階と2階に住む隣人に過ぎないが、家族も恋人も友人もいないもの同士。
毎晩一緒に冷凍ピザを温めてかじりながら、お気に入りのカンフー映画を見て過ごしてきた。夜が更けると各々の部屋に戻って就寝し、朝になると出勤、休日は2人で考えたゲーム「パドルトン」(壁打ちテニスのようなもの)に興じる。
致死薬を購入するため、遠方まで車で小旅行する珍道中を挟みながら、2人は判で押したように同じ日常を送る。それが退屈であると同時にかけがえないものであることを、こんなにもしみじみわからせる展開が心憎い。世間話が苦手で、あえて大切なことを口にしないまま、食事をするときも、映画を観るときも、パドルトンをするときも横並びでいる2人の距離感が視覚的に伝えるものがある。

2023403