タキ

イエスタデイのタキのレビュー・感想・評価

イエスタデイ(2019年製作の映画)
3.5
世界中が12秒間停電した夜、自転車で帰宅途中バスにはねられ、ビートルズのいないパラレルワールドを生きることになった売れない崖っぷちミュージシャンの物語。
ささいなエピソードが楽しくて何回も笑ったし、ビートルズの楽曲がたくさん聴けて主役の彼はそれなりに歌が上手いし(ジャック役のヒメーシュ・パテルは実際に演奏して歌ってるらしい)おおむねよかった。
だ、け、ど、果たしてこれだけのことで済むのだろうか…という疑問がむくむくと湧き上がる。
ビートルズが消えてそれに付随してオアシスが消えてしまったのは彼らがビートルズから多大な影響を受けているということなんだろうけど、消えたのはオアシスだけなのか。ビートルズから生まれた文化、風俗への影響力には全く触れてなくて納得いかない。タバコとかハリーポッターとかを消すよりもビートルズから派生したものがどんどん消えてなにかほかのものに置き換わったりすればもっと遊びが生まれて面白くなったかもしれない。
かと言ってこのパラレルワールドでビートルズの歌を歌えばすぐに売れるかと思えばそうではなく、最初、ジャックは全く相手にされない。その理由を「誰が歌うかが問題なんだ」と言ってたけど、これはまさにその通りで、当時ビートルズの歌は彼らの物語と一緒に人々に受け入れられていたのではないかと思う。リバプール出身の彼らが作ったストロベリーフィールドやペニーレインがジャックが歌ったものと一緒だとはとても思えない。
現在もビートルズが偉大なメロディメーカーだったことは間違いない事実だけど、その部分をないがしろにしてただエド・シーランに見出されて有名になった、では人々を熱狂させたムーブメントを作った人々とはあまりに格が違いすぎる。
結局ジャックは一流アーティストの道を捨て、故郷で音楽教師をやりながらビートルズの曲をみんなに伝えることに専念するという選択をするわけだけど、これはいわゆるファン心理の布教だなぁと思ってふと気づいたんだけど、そもそもジャックはオアシスのファンだったような…?
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