イギリス、サフォーク
シンガーソングライターのジャックは、スーパーで働きながらギターを片手に音楽活動に勤しんでいた
しかし酒場で歌う機会があっても、応援をしに来たはずの友人達を含め誰も気にも留めず、成功する気配の無い日々を送っていた
ジャックの学生時代からの親友で、中学校教師の仕事の傍らマネージャーをしているエリーは、挫けそうになるジャックの背中を押す良き理解者で、彼の成功を信じ続けていた
そんなある日、エリーはフェスでのライブ権を獲得したと嬉々としてジャックに告げる
小さなテントではあるが、またと無い機会に気合が入るジャックだったが、またしてもライブは閑古鳥が鳴く始末
いたたまれない気持ちのジャックに、偶然バンドの付き人をしていた破天荒な友人ロッキーが声をかける
久々の再会に話が弾んでいると、ロッキーは自分の出番を忘れ、ジャックの目の前で付き人をクビにされてしまうのだった
その夜、エリーの運転で帰路に着いていたジャックは兼ねてより胸の底にしまっていた、もう音楽活動は続けられないという思いをぶちまける
フェスでの不人気ぶりに意気消沈するジャックを、エリーは何とか励まそうとするが彼の決意は固かった
居心地の悪いジャックはそのまま車を飛び出し、自転車に乗り換えて家へと急ぐのだった
その時、全世界で同時に停電が起こるという不可思議な現象が発生、ジャックは真っ暗になった夜道で角から飛び出して来たバスにはねられてしまう
病院で目覚めたジャックは、見舞いに来たエリーから、前歯を2本失っただけで無事だったことをからかい半分に告げられる
後日 退院したジャックは、エリーやロッキーら友人達に囲まれ、前歯を失ったことをからかわれながらも、退院祝いとして新しいギターをプレゼントされる
何か弾いてくれと言われたジャックは、今の気持ちとしてザ・ビートルズの『イエスタデイ』を歌い上げるが、あれだけ無関心だった友人達が熱心に聞き惚れるのを見て不思議に思う
何故かエリーまでもが、その曲をジャックが作曲したものだというように扱い、美しい曲だと大絶賛するのだ
ザ・ビートルズやポール・マッカートニーの名前を出しても話が噛み合わない
混乱したジャックは帰宅すると、インターネットでザ・ビートルズを検索するもヒットするのは甲虫ばかり
更にポール・マッカートニー、ジョン・レノン、リンゴ・スター、ジョージ・ハリスンもヒットしない
そこでジャックは、自分があの偉大なミュージシャンが存在しない世界に迷い込んでしまったことに気が付くのだった
ダニー・ボイル監督のファンタジー・コメディドラマ
しがない男がひょんなことからザ・ビートルズが存在しない世界に
しかしミュージシャンだったことから曲を思い出しながら無双することにする異世界転生モノ
まあ自分がミュージシャンで自分しかザ・ビートルズを知らなかったらやる事は一つなわけで
サクセスストーリーを歩むというコメディかと思いきや、脚本家がリチャード・カーティスということもあってドラマ軸にも振り分けたロマコメ作品だったりする
ザ・ビートルズと言えば、音楽史を代表する偉大な存在だし、最近の若者でも2、3曲くらい聴いたことがあるんじゃないかな
私も世代じゃないけど、昔 両親とドライブに行くと大抵流してた記憶がある
何にでも言えることかもしれないけど、それが存在しない世界ってだけでパラレルワールド感スゴい
そして割と意外だったのは、序盤に一切ザ・ビートルズの話題が出ないこと
勝手にジャックはザ・ビートルズの大ファンかと思ってた
存在しないことによって、存在しないものと向き合うことになるっていうのはパラレルワールドものの醍醐味だし、今回はジャックがミュージシャンってこともあって、改めてザ・ビートルズが世界に与えた影響を再認知していくというプロットは、まさに監督の言うザ・ビートルズへのラブレターになってる
またある種ジャックは、成功と共に元の世界でザ・ビートルズが歩んだ道を辿って行くわけで、自分自信や愛した音楽にも向き合っていく
王道なロマコメが主軸にありながら捻りの効いた作品として仕上がってる
もちろんザ・ビートルズの楽曲も数多く使われてるんだけど、個人的にめっちゃ面白かったのが、ジャックが必死こいて曲調や歌詞思い出しながら歌ったり、周りの人間があれこれ言ってくることで、自然とアレンジバージョンになってくところ
マジで上手いなと思った
あとエド・シーランが出るとは聞いてたけど、思ったよりガッツリ
ちなみに主演のヒメーシュ・パテルを面接で決めたのもエド・シーランの助言があったらしい
ザ・ビートルズのファンからしたら本当にその良さを実感できるし、ちょっもやり過ぎ感あるけど、ビックリするサプライズもある
なかなか先が読めないけど、ポジティブで受け入れやすいストーリーが大変身体に良いので観ましょう
鑑賞後はしっかり『Yesterday』の歌詞を読んで復習しような
