RAY

イエスタデイのRAYのレビュー・感想・評価

イエスタデイ(2019年製作の映画)
3.9
“The Beatles × わたし(あなた)の物語”


とても面白い映画でした。

何が面白かったのか。
それは、この映画の“発想”なのかなと思っています。


ひとつは映画のタイトル“Yesterday”。

ポール・マッカートニーは、この曲が浮かんできた時に、「(自分のではなく)誰かのメロディじゃないかと思った」とコメントしていますが(Wikipedia等でも紹介されています)、このあたりも映画の内容に繋がるところがあります。


もうひとつは、“The Beatles”であること。

世界中を熱狂させ、今も尚、歌い継がれるビートルズ。
彼等を映画の主体としたことが、この物語をとても面白くしています。

そうすることで、冒頭にも書いた、“The Beatles × わたし(あなた)の物語”が紡がれて行きます。


この映画の主人公は、売れないミュージシャン・ジャック。

彼は、“The Beatles”を誰も知らない世界で、彼等の曲で成り上がろうとします。

だけど、とても気になる事があるのです。
それは、ジャックが“売れないミュージシャン”と言う点以外、特に特徴が描かれていないのです。
たとえば、ギターが最高に巧いとか、歌声が素晴らしいとか。


だからこそ思います。
この物語は、“たまたま”ジャックが主人公であったのであって、物語の主人公には誰もがなることが出来るのだと。

もちろん、大前提には“The Beatles”へのリスペクトがあるのだけど、たとえば、歌詞ひとつで、たとえばメロディひとつで誰かの心を動かすことが出来るということを教えてくれます。

“The Beatles”のメロディをエド・シーランが歌ったら最高かもしれない。
だけど、そのメロディをひとたび誰かが歌えば、エド・シーランでさえも敵わない。


きっと、ちょっとした“きっかけ”で誰もが輝く事が出来るし、自分自身が見えてくることもたくさんあるんだよというメッセージを受け取った気がしています。

勇気と元気を貰える映画でした。


これからご覧になられる方には、単純に“The Beatles”のメロディを聞きに行くだけではなく、主人公を自分に置き換えて、“奏でて”みると、より楽しめると思います。


観て良かった。
RAY

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