亘

SKIN 短編の亘のレビュー・感想・評価

SKIN 短編(2018年製作の映画)
4.2
【毒蛇はどう区別するか】
レイシストのジェフは、妻クリスティ、息子トロイと幸せに暮らしていた。しかし黒人男性を暴行したことから彼の人生は大きく狂う。
URL: http://skin-2020.com/short-movie/

序盤はジェフたち3人家族の幸せな家庭と、ジェフの友人たちを含めた楽しそうな交友関係が見せられる。ここで見せるジェフの顔は、まさに良き父。子供に射撃を教えるのは、アメリカならではかもしれないが、トロイの成長とか成功を素直に喜んだりトロイを笑わそうとする姿を見ていると、それほど裕福ではないけど温かい良い家庭に見える。

しかしそれが一転する。スーパーで黒人男性がトロイに話しかけたことからその男性を友人たちと暴行。黒人男性は瀕死に陥る。するとその数日後にはジェフが謎の黒人たちに連れ去られる。そしてジェフは変わり果てた姿で帰宅し、やるせない結末に続く。

今作でポイントなのは、まず「色」だろう。
レイシストのジェフによる黒人差別と終盤のシーンに肌の色を直接的に表しているけど、それとともに序盤でトロイがジェフに話す「毒蛇の話」もメタファーになっている。
毒蛇には派手な色によって自らが毒蛇で危険だと示すものもいれば逆に地味な色のものもいる。毒を持たない蛇でも毒蛇に見せるために派手な体色のものがいる。結局のところは見た目では判断できないのだ。

この会話では「毒蛇=悪」として、悪者を見た目だけで区別できるかということなのだろう。人間でも同様に見た目で悪者は判断できない。だからこそジェフの「(派手な色で毒を持たない蛇)は嘘つきだな」という言葉は、レイシストのジェフへの皮肉に思える。
そしてなにより今作における「毒=悪」はレイシズムだろう。

そしてトロイと黒人の子供の対比も印象的。周囲の大人たちが、2人の前で暴行をして特に黒人の子の父は瀕死に陥る。まさに大人たちが世界の悪い面を進んで子供たちに見せているようで、きっとこれを見て育てば差別を再生産するんじゃないかと思う。
その結果の一つがあのラストシーンだったのかもしれない。

トロイはこの事故をどのように受け止めていくのか。短くても考えさせられる重厚な作品だった。
亘