てっぺい

ナイル殺人事件のてっぺいのレビュー・感想・評価

ナイル殺人事件(2022年製作の映画)
3.5
【豪華クルーズ体験映画】
ナイルの壮大さと客船の豪華さに、映画を通じた豪華クルーズの擬似体験。謎解きの爽快さを楽しみつつ、その奥に隠された様々な“愛”の形には物語の奥深さあり。

◆トリビア
〇ケネス・ブラナーは『TENET テネット』にも出演しており、監督のクリストファー・ノーランとは親密な関係。テネットのセットにある小道具を借りて本作のセットでも使用した。(https://eiga.com/news/20220219/4/)
○新婚夫を演じるアーミー・ハマーは、自身の過激なセックス嗜好が報じられ、出演作品を次々と降板した。(https://front-row.jp/_ct/17451584)
〇今年は原作者のアガサ・クリスティ生誕130周年、名探偵ポアロシリーズ出版100周年という記念すべき年。そして本作はアガサ自身が“旅行物のミステリーで史上最高傑作”と称している。(https://www.fashion-press.net/news/54226)
〇本作では、原作要素に加え、ポアロ自身の若き日とトレードマークの口ひげにまつわるオリジナル要素も描かれる。(https://eiga.com/movie/91950/special/)
〇全長70メートルを超す豪華客船は約30週間、巨大ホテルは約13週間かけて建造。高さ20メートル×幅30メートルの神殿もセットとして製作された。(https://eiga.com/movie/91950/special/)
○ 前作でも登場し、本作でも重要な役どころのトム・べイトマン演じるポアロの友人ブークは、原作にはいないキャラクター。(https://news.yahoo.co.jp/articles/ac1ca971479bd6686a229c26f36a2a59db3914e6)
○ 本作の衣装を担当するのは、「レ・ミゼラブル」「リリーのすべて」でアカデミー賞衣装デザイン賞を2度受賞している衣装デザイナーのパコ・デルガド。(https://eiga.com/amp/news/20220223/8/)

◆関連作品
〇「ナイル殺人事件」('78)(同原作で「キング・コング」の監督による作品。プライムビデオレンタル配信中)
〇「オリエント急行殺人事件」('17)(シリーズの第1作。エンドで本作に繋がるシーンあり。ディズニープラス配信中)
〇「ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密」('19)(ダニエル・クレイグが名探偵役。プライムビデオ配信中)

◆概要
2017年『オリエント急行殺人事件』の続編。
【原作】
アガサ・クリスティ「ナイルに死す」
【製作総指揮】
リドリー・スコット他
【監督】
「ベルファスト」ケネス・ブラナー(監督作『ベルファスト』(3月25日公開)は本年度アカデミー賞で7部門ノミネート)
【出演】
「TENET テネット」ケネス・ブラナー
「ワンダーウーマン」ガル・ガドット
「君の名前で僕を呼んで」アーミー・ハマー
「ブラックパンサー」レティーシャ・ライト
「キャプテン・マーベル」アネット・ベニング
「ゲーム・オブ・スローンズ」ローズ・レスリー
Netflix「セックス・エデュケーション」エマ・マッキー
【原題】Death on the Nile
【公開】2022年2月25日
【上映時間】127分

◆ストーリー
エジプトのナイル川をめぐる豪華客船の中で、美しき大富豪の娘リネットが何者かに殺害される事件が発生。容疑者は彼女の結婚を祝うために集まった乗客全員だった。名探偵エルキュール・ポアロは“灰色の脳細胞”を働かせて事件の真相に迫っていくが、この事件がこれまで数々の難事件を解決してきたポアロの人生をも大きく変えることになる。


◆以下ネタバレ


◆謎解き
船内の乗客は全員容疑者。前作の「オリエント急行殺人事件」同様、密室殺人の謎解きのドキドキ感。こと本シリーズに関しては、一人一人、ポワロが徹底した疑惑の目でかける尋問が何よりの特徴。尋問のたびに“こいつが犯人じゃん”と思ってしまう笑。結果、一番意外で一番意外でない結論だったけど、皆の面前で2人が同時に自害するのはこの映画らしさがあった。

◆愛
↑らしさと言うのは、本作を通じて描かれた“愛”。カトレーヌとポワロの“傷すらも魅力になる愛”が描かれた冒頭。ブークとロザリーの、肌や目の色の違いもいとわない、親の反対にも揺るがない愛。そしてジャクリーンとサイモンの同時の自害に至る愛。なんならブークの母親はあれはあれで子への愛だったし、おばちゃん2人の同性愛も。ラスト、髭を剃ったポワロ。カトリーヌに言われて生やした、いわば彼女への“思い”でもあった髭を断ち切ってサロメの歌声を聴いていたポワロは、彼なりに新しい愛に向かっていたように見えた。深読みかもしれないが、サイモンに撃たれるリネットが“サイモン”と囁いた描写は、“誰も信じられない”と語っていた彼女が、自身撃たれることを悟り、それでもサイモンを許す、究極の愛だったのかもしれない。本作を通じて描かれた愛が、サイモンとジャクリーンの同時自害という驚きの終焉を迎え、冒頭とエンドをポワロの愛の変遷で閉じる。脚本として大変美しい構成だと思った。

◆クルーズ
トリビアの通り、あの豪華客船とアブシンベル神殿はセットなのだというから驚き。個人的にエジプト渡航経験はあるのだけどアブシンベルには行けなかったので、あの神殿の壮大さと煌びやかな客船のパーティーがまさに自分も豪華クルーズに乗り込んだようで気分上々。特に事件の夜が明けた朝焼けのナイル川、神殿と客船と川の俯瞰映像が美しすぎてホントに息を呑んだし、クルーズで朝起きた時の爽快感を疑似体験したような感覚だった(メイドの悲鳴で覚まされたけど笑)。映画でよくある富豪のパーティーは、いつ見ても優雅な気分にさせてくれる。


前作の「オリエント急行殺人事件」では本作への伏線があったのだけど、本作では明確な次回作の匂わせがなかった。コロナで興収が見込めないのだろうか。このシリーズは是非2回だけでは終わらないでほしい。

引用元
https://eiga.com/movie/91950/
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ナイル殺人事件_(2022年の映画)
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