おのちん

ミッドサマーのおのちんのレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
2.0
新興宗教疑似体験

ゲットアウト的な、ヘンリー・ダーガー的な、ホドロフスキー的な、アーミッシュ的な、無印良品の店でかかってる音楽的な。

映画を見た直後は新興宗教的な世界だったなと思ったのですが、あとで調べてみたらヨーロッパのキリスト教国の夏至祭では、この「ミッドサマー」のホルガ村のようなお祭りはどこでも大々的に開催されていて特別なものではないのだなぁと初めて知りました。ということは、映画内でみんなが飲んでトリップしてるのはセントジョーンズワート?(有名なハーブ。日本でもぜんぜんふつうに買えます。)

内容的にはイマイチ。ほとんど大したストーリーはないのにかなり冗長なのんびりした展開でムダに時間が長かった。内容がないないならないなりに映像がよかったかと言われると、、、映像や世界観は好みは好みでしたがホドロフスキー監督並の突き抜け感もなく。

唯一、全裸合唱隊のみんなに見守られての大股開きの儀式場面は絵的にすごくよかった。あれくらい絵になる強度のあるシーンをもっといっぱい見せてほしかった。一瞬、ライアン・マッギンレーの写真とかキューブリック監督「アイズ・ワイド・シャット」を思い出した。

映像系ホラー系の監督さんらしいので大したテーマもないようで自分の恋愛トラウマ解消がこの脚本を書いた目的の一つだったとか?でもストーリー重視ではなく映像詩人の映像美を楽しむなら、パラジャーノフさんとかアンゲロプロスさんとかタルコフスキーさんとかテレンス・マリックさんとかメカスさんとか寺山さんとか、もっと遥かにレベルの高いほかに見るべき映画はいろいろありそう。

映像美+ちょっと難解なストーリーでやってくれてたら2.5点までポイントアップしてましたが、わざわざサスペンス要素を盛り込んでストーリーを引っ張っていこうとするのも好みではなかった。

あえてこの映画のテーマを考えると、文明批判というありきたりのものになるのかも。「この映画を見たあなたは、この村のルールや伝統、価値観が気が狂ってると思ったでしょう?でもほんとうにそうでしょうか。あなたが毎日生活してる、貧富の差がどうしようもなく大きかったり、ネットで弱いもの見つけて集団リンチしたり、イヤイヤ働いて心を病んだり、そんないろいろのそっちのあなたの世界のほうが正常だと思うのですか?」といういつものやつです。

主人公のぽっちゃり女子のラストシーンの微笑みがまさにその問いに対する答えで、彼女は「自分が幸せになれるのはこっちの村だ」と、自分の居場所を見つけた喜びがあの笑顔になったのではないでしょうか。

こういうカルト映画は昔だったらほんとの一部の人がミニシアターかレンタルビデオでこっそり見て、「あなたも見たんですか」「あなたもですか」「お互い好きですな」と少数派同士で悦に入ってたと思うんですが、大型シネコンでのロードショーゆえ、笑っていいとも!を見に来てるような普通すぎるOLさんも見に来てるし、時代が変わったのかA24の商売がお上手なのか。

2020.3.6
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