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さすらいの人 オスカー・ワイルドのSPNminacoのレビュー・感想・評価

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同性愛者として投獄された後、フランスやイタリアに移り住んだオスカー・ワイルド晩年の日々。映画は貧困と失意の中、愛に飢えた彼が自ら孤児に語る「幸福の王子」に重ねられている。かつて才能と愛を捧げた英国や若く美しい恋人ボジーは彼から何もかも容赦なく奪い去り、そして再会を願った妻も世を去り、残ったのは鉛の心臓だけ。ワイルドは醜い世間の映し鏡として、甘んじてその犠牲となっていく。
増量特殊メイクで老いて荒んだ姿のワイルドを演じたルパート・エヴェレットは、それでも見捨てられないチャーミングさを備え、最期まで物哀しいほど諧謔的に振る舞う魂に寄り添っていた。落ちぶれた彼が話す言葉は優雅な詩、例えパリの貧民街でも彼の居る場所は喝采を求め続ける劇場。そして数少ない観客を前に悲劇であり喜劇の幕が下りる。
記憶の中と現在がテンポよくザッピングされ、ガブリエル・ヤレドの壮麗な音楽、幻想的な心象風景やカメラワークが美しい。懺悔を乞う俗人が聖なるものを生み出すこともある。監督脚本役者としてルパート・エヴェレットの伝えたいワイルド像というのがよくわかる。
ジョナサン・リース・マイヤーズに似た怪しい美貌のコリン・モーガンも良かったが、盟友コリン・ファースの友情出演が胸熱。あ、パリの居酒屋主人役でベアトリス・ダルが!
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