Benito

ラストブラックマン・イン・サンフランシスコのBenitoのレビュー・感想・評価

3.9
【 都市の富裕化現象の影で起きたこと 】

この映画はサンフランシスコにある低所得地域が再開発(ジェントリフィケーションの波にのまれ)され、不動産価値が高まってしまったヴィクトリア朝時代を思わせる邸宅が舞台。主人公ジミーの家族の想い出が詰まった古い屋敷を、不動産会社がいわゆるリノベなどでお洒落にして、高い値をつけて売ってしまう。そこに生きる取り残された主人公の悲しさ、友達モントの優しさ、地域に住む住民たち、そんなときアカペラで歌う"花のサンフランシスコ" が流れる。

「ムーンライト」を製作したブラッド・ピットらが設立したプランBエンターテインメントと「ミッドサマー」を製作したスタジオA24の作品。

まず、映像センスが好き。
オープニングに横移動で登場人物を捉えるトラッキング・ショット、スロー、フォーカシングの美しさから惹かれた。

次に選曲センスに惹かれた。
冒頭早々にマイケル・ナイマンの現代音楽 "MGV, or Musique à Grande Vitesse" が使われるカッコ良さ。それにジェファーソン・エアプレインの" Somebody to love (あなただけを) "やジョニ・ミッチェルの "ブルー"が流れるという監督のセンスが光ってるなって。劇伴を担当したエミール・モセリの感傷的な音楽(サントラ全26曲だけど、上記楽曲3曲は未収録)も心に響いたし。

映像と音楽だけでも浸れる映画。

でも何と言っても、ラストシーン。
頑張れ、ジミー!


ついでに
"花のサンフランシスコ"の歌詞の美しさ

If you're going to San Francisco
♪もし君がサンフランシスコへ行くなら

Be sure to wear some flowers in your hair
♪頭に花を着飾って行くといい

♪If you're going to San Francisco
もし君がサンフランシスコへ行ったなら

♪You're gonna meet some gentle people there
そこで世話好きの人たちと出会うだろう
Benito

Benito