このレビューはネタバレを含みます
初見はちんぷんかんぷんで
何が何やら分からなかったけど、
何度も観るとスゴく少年漫画的な映画
であることが分かってきた。
それとノーランが007を大好きなことも笑
明確な行動原理と
何でそうなるの!な謎行動は
少年漫画と007にはなくてはならないものだ。
「自分しか見ていないのは人間じゃない」
これがPROTAGONIST(とニール)のTENET。
明確な行動原理。
終盤の主人公とセイターの問答は
わかりやすく正義vs悪だ。
だけど人間、この塩梅が難しい。
主人公とニールはめちゃカッコいいと思う。
同時に、全てを(まさに全てを!)捨てて
自分のことしか考えず引き金を引いた
キャットにスッキリしたし、
セイターを可哀想だと思う自分もいる。
「私が死ぬ時世界も死ぬ」
セイターのTENETもまた真理だ。
子供染みたこの理屈も、
「自分」という物語において
主人公たり得るためには必要な理屈だ。
まさにキャットに必要だったように。
ま、ここまで長々と書いてきておいてなんだけど、思想そのものは上記の通り塩梅の問題だと思うし、それこそ数々の少年漫画が表現してくれているのでここで切り上げまする。
ここまで踏まえた上で、
個人的にはやっぱりセイターを憐れんでしまう。
彼があんな人間になったのは
生い立ちによるものが大きいと思うし、
その結果こうなることは
生まれた時から決まっていた運命だと思うと
悲しい。
未来人に選ばれた彼は、
必然のセカイで生きてきた。
未来と過去が存在しないセカイ。
「今」を生き残るために
いつも自分だけを見つめてきた彼は、
誰よりも縛られてきた。
引き金を引いたキャットの“自由”とは対になる。
自業自得ではあるけど、
その業は未来人のものであり、
環境破壊をしてきた過去の人類のものでもある。
主人公の言う通り人間らしくない彼だけど、
せめて私はセイターという存在を憐れむ。