しゅんすけ

TENET テネットのしゅんすけのレビュー・感想・評価

TENET テネット(2020年製作の映画)
4.5
「TENET テネット」

 クリストファー・ノーラン監督の最新作。
 未来から送られてきた「時間を逆行する弾」等の残骸。未来で人類が滅亡したサインだとを聞かされた「名も無き男」(ジョン・デヴィット・ワシントン)は時間逆行の鍵を握るロシアの裏社会の大物と接触し、極秘任務を遂行するという話。

 興行的には不振なのは仕方ないにしても、批評家筋の反応が過去作の「インセプション」や「ダンケルク」よりも鈍いのが気になっていました。大体の批評家の意見の総意は、「映像や演技はいつものノーランらしく素晴らしいけど、設定とかいろいろようわからんし、雑じゃないか?」といったものでした。うーん、確かに。

「ダークナイト」以来続いているド派手なアクションで見せるオープニングも、今回は輪をかけて全くこの人たちが何のために何をしているのかわからない。困惑がしばらく続きます。

 序盤でとても印象に残る面白い台詞があって、「私たちは未来と通信してるじゃない メールやクレジットカードで」とある人物が言います。なるほど、確かにクレジットカードは、未来の自分がちゃんと口座にお金を残していることを信じて、今の自分が決済する。で、その過程には支払いを一旦は代行している業者もいる、と。で、引き落とし日のためにあれこれと口座にお金があるよう算段する。なんとなーく本作のテーマが伝わってきたような気になりました。

 役者陣は、主演を張るジョン・デヴィット・ワシントンがものすごく良くて、彼のダイナミックな動きのおかげで、ノーラン作品の中でも一番見ごたえのあるアクションの仕上がりになっていたと思います。サポート役を務めるロバート・パティンソンもめちゃくちゃクールでカッコ良かったです。「インセプション」のときのジョセフ・ゴードン・レヴィット的なポジションを見事に演じています。女神みたいに美人なエリザベス・デビッキはでかすぎて(191cm )、ヒール履いたら2m超えるもんだから、会話するときに他のキャストが見上げてしまってるのが笑ってしまいました。

 序盤の意味不明なアクションから続いたあとの終盤近く飛行機の滑走路でのアクションシーンは「なるほど」と「何このアクション!?」の連続でかなりアガリました。終盤のアクションシーンについては、同時並行で進むシーンがあまりにも地味すぎるので、テンションは下がりました。ただ、映像だけでなく音楽まで逆再生が駆使されてたのは面白かったです。

 終わってみれば、「うーん、なるほど。よくわからん。けど、やっぱり面白かった」といういつものノーラン作品観たあとの感想に落ち着きました。ノーラン映画は基本複数回観るのが前提なので(複数回観たくさせるし、2回目観たほうが面白く感じさせる作品を作る監督なんて本当に貴重)、また観て、いろいろ考察する時間を楽しみたいと思います。