Ryu

ひとよのRyuのレビュー・感想・評価

ひとよ(2019年製作の映画)
3.9
平成16年5月23日、土砂降りの夜、タクシー会社を営む稲村家の母 こはるは子供たちに暴力をふるう夫を殺害する。こはるは子供たちに必ず帰ってくると言い残し、家を出る。それから15年後。事件によって運命を狂わされた、長男 大樹、次男 雄二、長女 園子のもとに母 こはるが戻ってくる。

父を殺した母の行動は正しかったのか。まずはそんなことを考えたりしますが、本作のキモはそんなところではないと思います。壊れた家族はつながれるのか。そんなヘビーなドラマを白石和彌監督が抉るようなテイストで魅せてくれます。
3人の兄妹はみんな、順風満帆とは言えない人生を送っております。そんな時に父を殺した母が帰ってくる。暴力から解放してくれた一方、業を背負わされた母親に対して、子供たちは各々の感情を持っています。そんな三者三葉の兄妹たちのぶつかり合い、母親に対する叫び には震えるものがありました。確かに再会したての時はぶつかったりするけど、それによって家族という歯車が再び動き出します。
佐々木蔵之介演じる堂下の存在も中々キーになってきますね。子供が上手くいかないのは全て親のせいなのか。 決してそんなことはないと思いますが、当の子供に言われた親の気持ちを考えると、やるせない気持ちになります。終盤の佐藤健と佐々木蔵之介の“子”、“親”としての心からの叫びにもこれまた震えさせられました。
とにかく重いドラマなんですが、タクシー会社の和気あいあいとした雰囲気が心を照らしてくれるような感じで、非常に良かったです。あと、中盤に出てくるとあるヤクザのキャスティングにも笑っちゃいました。
本作は設定や脚本も優れていると思うのですが、やはり一番は豪華キャスト陣 お喋り関西人リーダーによる演技合戦でしょう。鈴木亮平、佐藤健、松岡茉優、3人とも、めちゃくちゃイイ演技してて、ホンマの兄妹じゃないかって思うくらい自然でした。怒号飛び交い、ぶつかり合う様には見入ってしまいました。家族の衝突がメインだからこそ、3人がタバコを吸いながら笑い合うシーンとかには、グッとくるものがありました。
白石和彌監督による抉るような演出、それを見事に体現するキャスト陣の熱演など、非常に見応えのある骨太な作品だったと思います。
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