ベビーパウダー山崎

制服私刑(リンチ) ねじり込め!のベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

3.5
強烈な画で惹きつけながら、見る者の想像を刺激していく60分。アブノーマルな台詞と暴力的な眼差しは時代を感じさせない(世界が古びない)。ゲリラ撮影と箱庭的な演劇チックな世界。「鏡」に「テレビ画面の砂嵐」、これぞ佐藤寿保の映画。
赤い月に生理も処女の血も吸うヴァンパイア要素もごちゃ混ぜに、どこか近未来的にも見える新宿だが、佐藤寿保はSFとSMの作家(もちろん佐藤寿保のSでもある)。ラストに用意されている、ノイジーな音楽に延々とスローで見せていく濡れ場。ここまでヤリきれば現代アートの領域(もしくは晩年のゴダール)。
端からゲリラ戦で挑んでいるから、泥試合も勝ちに持っていける。どん詰まりの少女、カルトにオカルト、『終わりなき日常を生きろ』よりも鋭く、洗脳と欲望はオウム神理教より先を行っている。そして、催眠で人殺しは『キュア』よりも全然早い。新宿地下で頭の悪そうな女性を拐う、一連の流れにゾクゾクと興奮。キャメラの位置も間違いなく、スリラーとして全く無駄がない。
80年から90年の日本映画なんて負の積み重ねだと思っているが、佐藤寿保映画を量産させたXCESの功績は称えていきたい。日本映画が持つ財産の一つ。助監に今岡信治。