サンタ

パラサイト 半地下の家族のサンタのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
3.6
「パラサイト 半地下の家族」
原題「기생충/Parasite」

“黒と白、超えられない線はない”

「殺人の追憶」「グエムル 漢江の怪物」「スノーピアサー」の監督ポン・ジュノと主演ソン・ガンホが4度目のタッグを組み、2019年・第72回カンヌ国際映画祭で韓国映画初となるパルムドールを受賞した作品。
途中まで様々なコメディがたくさん含まれており、『貧困』や『格差』といった作品を通してのメッセージもわかりやすく提示されていて面白いなと思いました。
今作の構造として簡単にいうと、お金持ちは地上、極貧者は地下にいます。パク家は『富』の象徴です。主人公の家族はその間の“半地下”に住んでいるため、お金持ちと極貧者の間の『貧困者』ということがわかります。
主人公のギウは『富』をもたらす山水景石を手に入れると、予告でもわかる通り、パク家に寄生(パラサイト)します。その過程である“半地下”の存在を蹴落として、様々な方法で職を掴み、家族丸ごと“パラサイト”していく展開は、何とも痛快で興味深かったです!
ポン・ジュノ監督が『ネタバレ禁止』と動画で言っていたので、ここからはあまり物語に触れず、感想を言います。
今作は、お金持ち、貧困者、極貧者に様々な”メッセージ“を送っていると思います。
お金持ちに対しては、困っている貧困者や極貧者に気づかず、また傍観していれば、いずれは『災い』となって返ってくるだろうという『警告』と、貧困者を救うことは出来るという『証明』。
貧困者に対しては、お金持ちに寄生(パラサイト)し極貧者と争うのではなく、計画的に自ら稼ぎ『塵も積もれば山となる』のように少しずつ『富』を手に入れることで、極貧者や他の同じ立場に立たされている貧困者を救うことができるという『希望』と無計画に行動すればどん底に転落するという『教訓』。
極貧者に対しては、貧困者と争うのではなく、自らお金を稼ぐ気持ちを持てと叱咤激励。
加えて、今作は韓国経済を描いており、貧困者や極貧者が増えている中、韓国人同士で争えば、他の国の人々に『富』を奪われてしまうというメッセージが含まれていると思いました!
残念な所も1つあって、ある家政婦がピンポンして、そこから展開が一転する、いわばターニングポイント的なシーンですが、普通あんな気持ち悪い姿でピンポンしにきたら、家に入れないだろうと思い、少し冷めました。
ですが、カメラワークは巧みで、貧乏側は上から下、お金持ち側は下から上に映しており、これは『貧乏は金持ちから見下ろされる立場』と捉えることができます。少し話がそれますが、『上』を求める貧乏人と『下』を見ないお金持ちの表現も見事で、貧困者のキム一家はWi-Fi(電波)を拾うためにスマホを『上』にかざす。
対してお金持ちのパク家は『下』を見ない。キム一家がテーブルの下に隠れていてもバレないし、パク一家の女の子のベッドの下に主人公のギウが隠れていても気づかない。なぜなら、お金持ちは『下(貧困者や極貧者)を見ないからです。
この設定は素晴らしいなと思います!
最後に、結局思いやりの『恕』の精神も大事ですが、お金も大事だと、いろんなことを考えさせられる映画でした。また、最近のカンヌ国際映画祭パルムドール賞は、是枝裕和監督の『万引き家族』やケン・ローチ監督の『わたしは、ダニエル・ブレイク』など『貧困』や『格差』を描いた作品が選ばれる印象があると思います。
映画の感想から少し話をそらしますが、今作、小さいお子さんも高齢者など幅広い年齢層が観る金曜ロードショーに、ましてやこのご時世、こんな救いもない映画を流しても良いのかなと思いました。
まだまだ書きたい事がありますが、今回はここら辺にしようと思います。あまり長い文章だと見づらいですからね(笑)
考えさせられる“深い”映画が好きな方や、社会派作品が好きな方はおすすめ‼️

〜あらすじ〜
半地下住宅に住むキム一家は全員失業中で、日々の暮らしに困窮していた。ある日、たまたま長男のギウ(チェ・ウシク)が家庭教師の面接のため、IT企業のCEOを務めるパク氏の豪邸を訪ね、兄に続いて妹のギジョン(パク・ソダム)もその家に足を踏み入れるが...。

2021-02🏘
2020-225(映画館の鑑賞とお家での鑑賞)
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