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るろうに剣心 最終章 The Finalのよーだ育休準備中のレビュー・感想・評価

3.0
明治12年、横浜駅。志々雄真実に鋼鉄艦を売り渡した上海の武器商人が、乱闘の末に逮捕される。領事裁判権により清国領事館へと引き渡された男は直ちに釈放され、姉の仇である人斬り抜刀斎への積年の恨みを晴らすべく《人誅》作戦を実行に移す。


◆世界観とアクションシーンは折紙付。

漫画の実写化作品を成功させた(と個人的には思っている)本シリーズの良いところはやっぱり世界観とアクションシーン。今作においても、そこは一定の高いレベルでクオリティが保たれていました。一作目とは異なり『明確に漫画感が強くなる《京都編》》』を何とか乗り切った製作チームであれば、キャラの癖が多少なりともトーンダウンする《人誅編》を違和感のないレベルの世界観で映像化する事は容易かったでしょう。特に、原作漫画では完全に《MARVELのヴェノム》を丸パクリしていると言われても致し方ない《八ツ目無名異》のリデザインがカッコ良すぎた。映画版も変態臭が漂うフィクション感は強いのですが、個人的には『おぉ!』と唸ったポイントです。

一作目以降、本シリーズは《多対一》のアクションがカッコいいイメージでしたが、今作においてはちょっとやりすぎていた感が。三國無双感がここにきて従来作品よりも増していたなぁと感じます。スマッシュ攻撃で相手(雑魚キャラ)ぶっ飛びすぎ。剣先が掠って吹っ飛ぶのはマルスだけでいいんだ。

剣道経験者なので、今までは《神谷道場》の稽古シーンに『下手くそすぎないか』という違和感がありましたが、それすら『下町の道場感を出すための演出だったのか』と今作でようやく得心できました。《内務省 警視局巡査教習所》での稽古のシーン。一瞬でしたが、神谷道場とは格が違いました。ちゃんと手首が返っていたし、係稽古の勢いも良かった。


◆賛否が別れることは承知の脚本。

今作で(も?)問題となるのはプロットです。一作目は上手いこと継ぎ接ぎ出来ていて、あまり文句はありませんでした。二作目、三作目である《京都編》は原作の大筋だけをなぞって何とか形にしたものであり、悪くは無いですが、正直よい脚本とは言い難いと思っていました。今作においては、原作ファンか否かではっきりと賛否が別れる脚本であったと思います。

原作未読ないしそこまで思い入れが無い場合には、あまり違和感は無いプロットになっていたかと。剣心に恨みを持つ男が、剣心を苦しめるために《人誅》と称した復讐を行う。最終章に相応しく、過去作の敵が味方に転じて共闘する。勿論、戦闘シーンでの各キャラたちの見せ場も用意されている。剣心に強い恨みを持っていた縁が、亡姉の真意に触れて復讐心を断ち、剣心は不殺の誓いを守り通して終幕。

これだけ見ればシリーズ物のエンタメ作品のラストを飾るに相応しい脚本の様に思えますが、原作漫画における《人誅編》の意味合いはシリーズの大団円を飾るために設けられた訳では無いのです。戊辰戦争後、人斬りとして生きた過去に縛られ《流浪人》として根無草の生活を続けてきた緋村剣心その人が、自らの過去と向き合い、自分の未来(愛する人との生活)にようやく目を向ける事を描いたパートであった筈なのです。今作では其処が掘り下げられないままに『何となく』『それっぽく』盛り上げて終わりになっていたのが少しばかり残念でした。ファン向けムービーでは無く、アクションエンタメとして一定のバッシングは覚悟の上でのジャッジだったのでしょうね。《京都編》よりはコンパクトで上手く纏まっていたと思います。エンタメ作品的には。


◆後半になるにつれて過剰になる演出。

演出が過剰だなと感じる部分もちらほらありました。特にラストに向けて、その傾向は顕著になっていたと思います。

神木くんは良い役者だと思っていますし、好きな俳優さんなので、彼が演じた志々雄の右腕《瀬田宗次郎》のカムバックは『あり』です。ですが、流石に鞘一本で立ち回るのはやりすぎ!別に彼まで不殺縛りにしなくていいし、中スカスカの鞘でぶん殴って大人が吹っ飛ぶってどういう事よ。割れるだろ、鞘。

京都御庭番衆の蒼紫(伊勢谷友介)はデバフが、操(土屋太鳳)はバフが効きすぎ。蒼紫がやられた相手に操が勝つって…、もしかして●●?(自主規制)

今作でラスボスとして立ちはだかる雪代縁を演じた新田真剣佑も、前作で最凶のヒールを演じた藤原竜也に負けず劣らず頑張っていたと思います。飛んで跳ねてのアクションシーンや、復讐に駆られた危機迫る様子など凄く良かったです。が、度を超えてクレイジーなシスコンぶりは目につきました。

…あ。でも縁って、原作でも重度のシスコン野郎でしたね。