八陰あおたこ

マー ―サイコパスの狂気の地下室―の八陰あおたこのネタバレレビュー・内容・結末

2.2

このレビューはネタバレを含みます

なんともいえない。
まったくつまらなくはないが、面白いわけでもない映画のように思う。
 
なんというか…あらゆることが想像の範囲を超えていかない映画という感じ。
「まあ、そうなるよね」とか、「こうなるよね」みたいな感想ばかりになってしまう。
 
あらすじとしては、学生時代イジメにあった女性”マー”が、ひょんなことから悪ガキ高校生グループと知り合うんだけど、その子らの親が、実はイジメ関係者だった…という感じ。
 
 
全体的に、”マー”がふわふわしてた印象。
 
最終的には全員殺すつもりだったんだろうけど、にしては手足を完全に拘束せずに首輪だけ(これは獣医看護師としてのキャラを活かした?)で留めてるやつがいたりでおそまつ。
催眠剤を使ってたから油断してたのかな?
目が覚めたら手足がない、くらいしてもよかったんでは。
 
 
”マー”が高校生たちとアルコールパーティーをして愉しむ様は、本気で青春を取り戻そうとしているように見える。
でもやっぱり、ジェネレーションギャップには勝てず、昔と同様に子供たちからもハブにされてしまうんだけど、彼らを自分の家に招き入れた時点で殺害までは計画してない。
イジメ関係者の筆頭であるビッチのメルセデスを轢き殺したことからも、計画性があるようでまったくない、全体的に行き当たりばったりの犯罪をやってる。
 
このあたりが、”マー”から【怖さ】を奪ってるように思う。
 
もしかしたら…子供たちと仲良くなってそれがセラピーになり、円満グッドエンドの目もまったくないわけではなかったのかもしれないが、それはかなり可能性の低いレアエンドでしょうね…。
 
 
タイトルに「サイコパス」とついてるけど、”マー”はサイコパスではないと思う。
 
まず間違いなく、イジメによるPTSD(心的外傷後ストレス障害)を患っていて、かつパーソナリティ障害でもある。
反社会性、演技性、自己愛性、境界性パーソナリティ障害がまざってる感じ。
 
サイコパスというのはそもそも、「生まれつき自分以外の人間への愛情だとか思いやりを理解することができない人」のことなので、学生時代の”マー”をみているとそんな感じはしないし…。
なので、”マー”はソシオパスじゃないかしら。
ソシオパスというのは、生まれつきではなく、「なんらかの経験が原因で”後天的に”反社会性が身についてしまった人」のことです。
 
もしかしたら”マー”は、イジメにあわなければ善良な一市民として幸せに暮らせたかもしれません。
それは、彼女の娘であるジーニーをみればなんとなく想像がつきます。
ジーニーはものすごくいい子だからです。
 
イジメがなければ、”マー”はソシオパスにはならず、勤務先でも注意散漫にならず、上司の女医さんも殺すことはなかったんじゃないか。
あの女医さんもよくいままで”マー”を首にしなかったですね…有情。
 
 
あと、”マー”が娘のジーニーに行っていたエセ治療行為についてですが…彼女なりの愛情というか、娘が自分と同じような目に合わないようにするために自宅で軟禁していたのはわかるけど、注射とか飲み薬がなんだったのかよくわかんなかった。
 
本当に半身不随にするための薬なのだとしたら、まあSSS級の毒親という感じですね。
 
ただ、歩けない(ていの)ジーニーを他人に見せびらかしているわけではないため、”マー”は代理ミュンヒハウゼン症候群ではないでしょう。
※代理ミュンヒハウゼン症候群 … 自分の子供にわざと怪我をさせたりして、他人の同情を買うことで自尊心を満たすことにハマる心の病気。
ちなみに、代理ではないミュンヒハウゼン症候群は自分を傷つけて他人の同情を買う。
 
もう一つ、ジーニーに対する嫉妬もあったように思います。
自分が経験することができなかった輝かしい青春時代を、おくらせないためにも軟禁していたんじゃないか。
 
自分と同じ暗い青春時代を過ごさせることで、共感できる仲間を増やしたかったというか。
最悪、いずれ娘をどこかのバカに襲わせたりする可能性もあったのではないか……考えすぎかな。
 
 
イジメの内容には同情するし、高校生たちもわりとクソガキではあるので…”マー”に感情移入しそうになるのかなと思いきやそうでもなく…最終的にはジーニーが助かればいいかな~と思って観ていました。
 
なので、結論として映画はグッドエンド!
アンディが最後”マー”に言い寄ってキスしたのも、彼女であるマギーを守ろうとして一芝居うったと素直に考えてイイんじゃないかな…。
 
”マー”も含めて全員助かるトゥルーエンドを目指すには、過去に戻ってイジメを止めるしかないですね…。(その場合、ジーニーは生まれないかもしれませんが)
 
子供たちの中で、黒人少年のチャズだけ顔にペンキを塗るという、優しいお仕置きだったのがちょっと笑った。
全体的に、サイコスリラー系の犯人としては”マー”はやってることが手ぬるいというか、優しすぎるような…。
 
『ヘレディタリー/継承』に出てきた老人たちや『ミッドサマー』のホルガ村の連中のほうがコワイ…。
 
アンディが生きてたとして、アンディもジーニーもこれから里親を探したり大変だとは思いますが、なんとか幸せに暮らしてほしいですね…。