空海花

パリに見出されたピアニストの空海花のレビュー・感想・評価

3.6
バッハとラフマニノフ。
ピアノ演奏がとても良い。「蜜蜂と遠雷」を少し前に観てどちらもコンクールが山場なのだが、やはりレベルが違う。

主人公は今時の若者という感じ。なぜちょっとしたことですぐに投げ出すか。一括りにしてはいけないのだが。
それでも見ているとだんだん可愛く思えてくる。それは時折見せる母や兄弟への優しい態度からでもあるし、“女伯爵”教授の核心をついた言葉には隠さず素直に反応するのだ。ピエール教授の前で思わず見せた涙からは見方が変わった。
若者って勘の良い子は嗅ぎ分けているんですよね。本人は意識してないし言葉にもしないけれど。こういう風に接すれば良いのかな、なんてヒントになりそうと思ったり。もう戻れない若者像をとやかく言うより、どう歳を取れたらいいかを考える方が答えは見つかる。この教授のような女性になれたら素敵だな。お洒落だし、厳しさと優しさを兼ね備えている。
ピエール教授は意外と情熱的で強引。でも奥様への台詞はっきり言ってくれてすっとした。

邦題の“パリに見出された”はオープニングを意識してか。でもそのニュアンスはない。そしてこのオープニングの映像は好みではない。駅ピアノっていうのは良いのに。
代わりに教授の家は素敵だし、女伯爵のファッションにもグッとくる。ロマンスも必要になってくる。フランスはお洒落でいいな。安心する。

メインの登場人物を絞ってシンプルなのが功を奏している。あと少しガチャガチャしてしまうと気になりそうなところはちらほらある。
悪童たちも結局応援しちゃうところ好きだ。
やりたいことをやると決めたら周りも変わる。という話と受け取った。
空海花

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